セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(クローン病1)

タイトル 消P-422:

マウス腸炎モデルの骨質低下に対する成分栄養療法の抑制作用・1-IL-10KO自然発症マウスによる検討-

演者 池上 由佳(味の素製薬(株)・創薬研究センター)
共同演者 檀上 景子(味の素製薬(株)・創薬研究センター)
抄録 【目的】クローン病における骨質の低下は約50%に認められるとされ,QOLの観点から問題と考えられる.しかしながら,そのメカニズム解析および骨質低下に対するIBD治療薬の作用については未だ十分に検討されていない.我々は,IL-10KO自然腸炎発症マウスが腸炎発症による骨質低下メカニズム解明に適切なモデルであることを見出し,本モデルに対する「エレンタール」(ED)の腸炎および骨質低下に対する作用を明らかにすることを目的に検討を行った.
【方法】IL-10KOマウス (18週齢)の骨質の変化を大腿骨遠位のμCT検査を行い検討し,腸炎発症程度(腸管重量)との相関性を検討した.病態発症(下痢発現)後より6週間EDを摂取させ,腸炎および骨質低下に及ぼす影響を評価した.
【成績】IL-10KOマウスの6/9匹に腸炎発症による体重低下および腸管重量の増加を認めた.海綿骨については骨量の低下および骨梁構造の顕著な悪化,皮質骨については骨面積,骨幅の顕著な低下を認めた.この骨質の低下は,腸管重量および発症(下痢発現)からの経過時間との相関が高く,腸炎の発症に伴った低下であると考えられた.さらに骨吸収,骨形成マーカー解析から,骨質低下は骨代謝回転が低下した結果であり,臨床に類似したメカニズムによる骨質低下と考えられた.次に本モデルマウスを用い,EDの影響を評価した.発症後通常餌からEDに切り替えた結果,1週間後に顕著な体重減少抑制を認め,6週間後には腸炎の改善を認めた.骨質低下に対しては,海綿骨では骨量,骨梁構造の改善を認め,皮質骨では骨量,骨面積,骨幅ともに顕著な改善を認めた.EDの腸炎改善作用による骨質改善に加え,皮質骨への作用が顕著な事から,EDの易吸収性による早期の体重改善作用により,マウスの活動性に影響した可能性も考えられた.
【結論】IL-10KO自然腸炎発症マウスにおいてEDの治療的投与により骨質低下改善効果が確認された.臨床で認められる成長障害抑制効果のメカニズムのひとつである可能性が考えられる.
索引用語 栄養療法, クローン病