共同演者 |
杉田 昭(横浜市立市民病院・外科), 小金井 一隆(横浜市立市民病院・外科), 二木 了(横浜市立市民病院・外科), 黒木 博介(横浜市立市民病院・外科), 山田 恭子(横浜市立市民病院・外科), 木村 英明(横浜市立大市民総合医療センター・炎症性腸疾患センター), 荒井 勝彦(横浜市立市民病院・外科), 福島 恒男(松島クリニック) |
抄録 |
背景:潰瘍性大腸炎(以下UC)の長期経過例では大腸癌発生の頻度が増加することが知られているが,早期に診断をするための問題点は多い.目的;潰瘍性大腸炎合併大腸癌(colitic cancer:以下CC)の術前診断におけるsurveillance colonoscopy(以下SC)の有用性,問題点を明らかにする.対象・方法:2007年から2013年に手術を施行したCC76例(癌62例,dysplasia14例)をSC施行群(SC群:50例)と非施行群(NSC群:26例)の2群に分け比較検討した.結果:症例は男性45例,女性31例,および全大腸炎型64例,左側大腸炎型12例で,手術時年齢の中央値は47歳, 平均病悩期間の中央値は15.1年であった.術式は大腸全摘,回腸嚢肛門吻合術を60例,大腸全摘,回腸嚢肛門管吻合術を7例,大腸全摘,回腸永久人工肛門造設術を5例,Hartmann手術を2例,S状結腸切除術を1例,回腸人工肛門造設術を1例に施行した.腫瘍の主占拠部位は肛門管2例,直腸30例,直腸S状部10例,S状結腸13例,下行結腸6例,横行結腸6例,上行結腸が9例であった.組織型は高・中分化腺癌が50例と大部分を占めたが,低分化腺癌が5例,粘液癌が4例,印環細胞癌が2例,小細胞癌が1例と特殊な組織型も認められ,low grade dysplasiaが2例,high grade dysplasiaが12例であった.Stage0,Iの症例はSC群では76.0%(38/50),NSC群では53.8%(14/26)と有意にSC群に多く認められた(p<0.049).しかしSC群でも12例はStageII以上で発見され,うち3例は4型の低分化腺癌あるいは印環細胞癌で他臓器浸潤あるいは腹膜播種のためR1手術となっていた.他臓器浸潤あるいは腹膜播種を認めR1,R2手術となった症例は7例認められ,術後に化学療法を施行したが3例は死亡,2例は担癌生存,2例は無再発生存中である.結語:潰瘍性大腸炎合併大腸癌の早期診断にはsurveillance colonoscopyが有用であるが, 肉眼分類4型の症例では早期診断が困難な症例もあり,十分留意する必要がある. |