抄録 |
【目的】近年UC診療において粘膜治癒の重要性が認識されているが,侵襲性や簡便性の点から頻回の大腸内視鏡検査(TCS)は行えないのが現状である.最近,定量的便ヘモグロビン検査(qFIT)による粘膜治癒評価の可能性が報告された(Nakarai et al. AJG 2013).今回UC患者のTCS直前のqFIT(OCへモディア),臨床検査とCAIを行い,TCS所見との比較を行ったので報告する.【方法】対象はUC37例,延べ41例.TCS当日または前日に採血(CRP, ESR, Hb, plt, Alb),TCS前日までのCAIスコア,糞便はTCS前5~1日に採便し4℃保存後24h以内にサンプリング施行.TCSによる粘膜評価はMayoスコア(0-3)と,大腸6区域毎のMayoスコアを累積した累積Mayoスコア(0-18)を用いた.【結果】41回のTCSのMayoスコアは0: 8, 1: 10, 2: 15, 3: 8であった.Mayoスコア4群間で有意差をもつ項目はCAIスコア, qFIT, CRP, ESRとAlbであり,中でもCAIスコアとqFITのP値が低かった.次にMayoスコアと評価項目との相関を検討すると,有意に正の相関したのはCAIスコア, CRPとESR, 負の相関したのはHbとAlbであり,中でもCAIスコアとAlbの相関係数の絶対値が大きかった.なお,累積Mayoスコアとの相関はMayoスコアと同様であったが,Mayoスコアでは認めなかったqFITに正の相関を認めた.qFIT値のカットオフ値を100ng/mlに設定しMayoスコア0を粘膜治癒とした場合の感度,特異度は各々100%, 66.7%,Mayoスコア0/1を粘膜治癒とした場合は各々77.8%, 78.3%であった.【結論】他の報告同様,qFITは粘膜治癒の一つの指標になることが確かめられた.但し,Mayoスコアとの相関からはCAIスコアとAlbも有用なバイオマーカーと考えられた. |