共同演者 |
猿田 雅之(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科), 西條 広起(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科), 三戸部 慈実(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科), 有廣 誠二(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科), 松岡 美佳(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科), 加藤 智弘(東京慈恵会医大・内視鏡科), 池上 雅博(東京慈恵会医大・病院病理部), 田尻 久雄(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科DELIMITER東京慈恵会医大・内視鏡科) |
抄録 |
背景;潰瘍性大腸炎(以下UC)では,炎症が消退しても粘膜の改善が乏しければ症状の改善は乏しいことから,粘膜を速やかに修復させることが重要である.亜鉛は損傷粘膜に対しての粘膜修復の効果が実証され,胃潰瘍をはじめとした粘膜損傷部位に特異的に付着し,薬理効果を発揮することがラットを用いた研究でも証明されている.そこで,我々は創傷治癒促進作用,抗炎症作用,抗酸化作用などの生理活性を有する亜鉛とL-カルノシンの錯体であるポラプレジンク(以下PZ)に注目し,UC粘膜の修復を促進しうるかを検討した.方法;当院で2009年2月から2011年10月の間に中等度から重症UCの診断で入院となった患者28人を対象に無作為試験に,18人の150mgPZ注腸群と10人のプラセボ(生理食塩水)注腸群の2群に振り分けた.全症例でステロイドや免疫抑制剤などの通常の寛解治療を行ったうえに注腸治療を併用し,PZ注腸の上乗せ効果を評価した.評価は,注腸治療開始前と治療1週間後の臨床症状(Mayoスコア),内視鏡所見(6段階評価で行うMatts分類改定版),病理所見(Matts分類)にて行った.結果;PZ群では,治療開始前後の内視鏡所見では,プラセボ群でS状結腸のみ有意に改善したのに対し,PZ注腸群では直腸(p=0.004),S状結腸(p=0.03),下行結腸(p=0.04)において有意な改善を認めた. Mayoスコアによる臨床評価では,両群で治療前後で有意差を認めたが,PZ群では9.1 ± 1.6から5.8 ± 2.7 (P=0.00004)と,プラセボ群で8.9 ± 1.7から7.4 ± 2.1 (P=0.009)に比較して,より大きな改善が認められた.Mayoスコアによる臨床的改善および寛解数もPZ群で有意に多かった(PZ群:プラセボ群=71%:10%).結語;UC患者に対して,亜鉛とL-カルノシンの錯体であるポラプレジンク注腸治療を行うことは,粘膜修復促進における新しい上乗せ治療として非常に有用であると考えられた. |