セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(潰瘍性大腸炎8)

タイトル 消P-491:

Thymidine Phosphorylaseを標的とした潰瘍性大腸炎治療薬の開発

演者 香川 美和子(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学)
共同演者 岡久 稔也(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学), 中川 忠彦(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学), 高場 梓(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学), 郷司 敬洋(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学), 矢野 弘美(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学), 北村 晋志(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学), 岡本 耕一(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学), 宮本 弘志(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学), 六車 直樹(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学), 高山 哲治(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・消化器内科学)
抄録 【目的】潰瘍性大腸炎(UC)の患者数増加や高価な治療薬使用による医療費増大が問題となり,より安全で安価なUC治療薬の開発が望まれている.Thymidine Phosphorylase (TP)は,チミジン分解酵素であり,関節リウマチなどの炎症局所に過剰発現し,血管新生に関与する.UCの炎症局所にもTPが高発現することが報告されているが,UCの病態におけるTP発現の意義は不明である.そこで,UCにおけるTP発現の程度とTP特異的阻害剤の抗炎症効果を調べ,TP阻害によるUC治療の可能性について検討した.【方法】UC32症例より採取した184個の生検組織のTP発現と内視鏡及び組織学的重症度との関連を評価した.また,C57BL/6Jマウスに2%DSS溶液を7日間摂取させ腸炎を作製し,TP発現を確認した.さらに,TP特異的阻害剤6-(2-aminoethyl)amino-5-chlorouracil(AEAC)を合成し,AEAC1mg/kg,10mg/kg,SASP100mg/kgをDSSの投与前から連日8回経口投与し,炎症改善度と大腸組織のサイトカイン濃度(23種類)を測定した.【結果】UC症例の炎症組織では,TPはマクロファージ,線維芽細胞,リンパ球,血管内皮細胞に発現し,発現程度は内視鏡的重症度(r=0.58)及び組織学的重症度(r=0.77)に相関した.TPの発現はDSS腸炎マウスの大腸炎組織にもみられ,体重減少率,DAI Score,Histological Damage ScoreはAEACの投与により用量依存的に改善した.6種類のサイトカインの大腸組織濃度がAEAC用量依存的に減少し,AEAC10mg/kg群の減少率は,TNF-α 78.2%,IL-1β 73.6%,IFN-γ 75.1%,IL-17 62.1%,MIP-1α 68.2%,IL-10 44.0%であった.AEAC10mg/kgの抗炎症効果はSASP100mg/kgと同等であった.【結論】TPは,UCの炎症の程度に比例して炎症局所に高発現する.TP特異的阻害剤AEACは用量依存的に炎症性サイトカインを抑制して炎症を抑制することより,UCの治療に応用し得ることが示唆された.
索引用語 潰瘍性大腸炎, Thymidine Phosphorylase