セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(潰瘍性大腸炎10)

タイトル 消P-503:

当科で経験した潰瘍性大腸炎に合併したcolitic cancerの検討

演者 稲場 勇平(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科)
共同演者 藤谷 幹浩(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科), 高後 裕(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科)
抄録 【背景・目的】炎症性腸疾患(IBD)の長期経過例では癌の発生リスクが高く,炎症を背景に発症する大腸癌はcolitic cancerと呼ばれIBDの長期予後を左右する大きな問題となっている.今回我々は,炎症性腸疾患のうち潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)に合併したcolitic cancerについて検討を行いその発症に関わる特徴を明らかにする.【方法】2000年1月より当科にて経験したUC症例265症例中,手術症例は115例であり,colitic cancerを合併した症例は8例(男性3例,女性5例)であった.これらcolitic cancer症例の特徴について検討を行う.【結果】年齢は39歳から81歳(平均55.4歳)であり,UCの罹患期間は7年から22年(平均13.5年)であった.治療は,7例で5ASA製剤の内服があり4例ではステロイド剤や免疫抑制剤が使用されていた.UC活動性は緩解が3症例で軽症が1例,中等症が4例であった.なお前回内視鏡検査から癌発見までの期間は2か月から40か月(平均15.5か月)であり,特に半数の4例では12カ月以内に内視鏡検査が実施されていた.癌発見時における肉眼所見は3症例が隆起性,3症例が狭窄所見,残り2症例で潰瘍所見として観察された.大腸癌発生部位は上行結腸が1例,横行結腸が1例,左側結腸が3例,直腸が3例であり,組織型は高~中分化型腺癌が5例,低分化型が1例,粘液癌を含むものが1例,腺扁平上皮癌が1例と未分化癌が多い傾向であった.大腸癌取扱い規約(第7版)による分類ではStage0が1例,Iが1例,IIが2例,IIIaが2例,IIIbが2例であった.手術は全例に大腸全摘を行った.【結論】UCに合併するcolitic cancerは欧米ではUC全体の3.7%,本邦では2.6%と報告され自験例では3.0%(8/265例)と同程度であった.癌発見12ヶ月以内に半数で内視鏡検査が施行されており,これはcolitic cancerの内視鏡診断の難しさを表す.今後サーベイランス法の普及だけではなく,拡大内視鏡,NBIや蛍光内視鏡を用いた新しい診断法の確立が望まれる.
索引用語 潰瘍性大腸炎, colitic cancer