抄録 |
【目的】当院の大腸pSM癌の内視鏡治療成績からその妥当性について検討する.【方法】2006年10月から2011年9月までの5年間に当院で初回内視鏡治療された大腸pSM癌(42例44病変)について,内視鏡治療群と内視鏡治療後追加外科切除群(以下追加治療群)に分け,病理所見と予後から当院の内視鏡治療の妥当性について検討した.【結果】内訳は内視鏡治療群が28例30病変,追加治療群が14例14病変. 内視鏡治療群は,SM浸潤度1,000μm以上かつ脈間侵襲陽性であった1例と垂直断端断端陽性であった1例を除き,大腸癌治療ガイドラインにおける内視鏡治療適応病変であった. 垂直断端陽性例に経肛門的粘膜切除術を追加したが,切除標本に腫瘍の残存を認めなかった. また,治療後経過観察期間中に局所再発や転移の出現した症例や死亡例は認めなかった. 追加治療群の切除理由は,垂直断端陽性4,脈管侵襲5,SM浸潤度1,000μm以上12,組織型(未分化癌)1であった(重複あり). 11例は切除腸管やリンパ節に癌組織を認めなかった. 切除腸管に癌の遺残を認めた症例は1例で,3cmの病変を分割切除されていた. リンパ節転移を認めた2例はいずれも脈間侵襲陰性だったが,1例は分割切除の症例であった. 経過観察期間中に再発した症例はなく,他病死を1例認めた.【結論】当院で初回内視鏡治療を施行した大腸pSM癌に再発・原病死した症例はなく,当院の治療方針は概ね妥当と考えられた. しかし,SM深部浸潤が約25%(12/47)を占めており,術前の進達度診断の精度を上げる工夫が必要であること, 2cmを超える病変については, ESDによる一括切除で切除断端や脈管侵襲の評価をするべきと考えられた. |