セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(治療(化学療法1))

タイトル 消P-531:

FOLFOX/FOLFIRI治療前後における血清鉄変動機序の検討

演者 落合 匠(東部地域病院・外科)
共同演者 西村 和彦(東部地域病院・外科), 渡部 智雄(東部地域病院・外科), 北島 政幸(東部地域病院・外科), 中谷 晃典(東部地域病院・外科), 岸根 健二(東部地域病院・外科), 佐藤 剛(東部地域病院・外科), 大久保 悟志(東部地域病院・外科)
抄録 【目的】抗癌剤投与時における血清鉄変動に関してはすでに1985年にFollezooらにより報告されている.今回我々はFOLFOX/FOLFIRI治療前後における血清鉄変動機序解明を目的に血清鉄制御機序の主役であるhepcidine-25 と赤芽球数を反映するといわれている可溶型トランスフェリン受容体を加療直前・直後に測定し新知見を得たので報告する.【対象】H24年9月からH24年11月に当科にて放射線治療未施行でFOLFOX/FOLFIRI(±分子標的薬)治療が施行された進行・再発大腸癌9例.【方法】加療直前・直後における血清鉄値, hepcidine -25, 可溶型トランスフェリン受容体を測定し比較検討した.【結果】血加療直前・直後における血清鉄の平均値は64.6,192.8μg/dLであり,hepcidine -25の平均値は10.5,41.5ng/mLと有意な上昇が認められた(p<0.001).一方,加療直前・直後における可溶型トランスフェリン受容体の平均値は36.4,39.3nmol/Lと有意な変動は認められなかった(p=0.36).【考察】治療前後においてAST,ALT上昇等の肝機能障害が認められなかったことより,この血清鉄上昇の原因は肝細胞からの鉄の逸脱ではない癌宿主応答と考えられた.さらに可溶型トランスフェリン受容体に変化が認められなかった事より,赤芽球数の減少すなわち赤芽球の破壊は生じていないと考えられ,赤芽球からの鉄の流失も否定的と考えられた.一方, hepcidine-25は元来血清鉄を低下させる生理的活性を有するが,加療後においては血清鉄と共にhepcidine-25の有意な上昇が認められており,これは血清鉄の上昇に反応してhepcidine-25が増加したものと推測された. 以上のことより血清鉄上昇の機序に関しては抗癌剤投与により骨髄造血過程における鉄の消費量が低下し,この結果血清鉄が上昇したものと考えられた.
索引用語 血清鉄, hepcidine-25