セッション情報 ワークショップ9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

分子診断学からみた大腸腫瘍の治療成績と予後

タイトル 消W9-3:

大腸癌の予後因子とmicroRNAの発現

演者 中川 義仁(藤田保健衛生大・消化管内科)
共同演者 赤尾 幸博(岐阜大大学院連合創薬医療情報研究科・創薬科学), 平田 一郎(藤田保健衛生大・消化管内科)
抄録 【目的】microRNA (miRNA)は22-25ヌクレオチドの小さな機能性RNAで、標的となるmRNAと結合して翻訳調節をすることから、その破綻は疾患と深く関連する。我々はこれまでに大腸腫瘍症例とヒト大腸癌培養細胞株を解析し、大腸の腫瘍組織においてmiR-143、miR-145、miR-34aが共に高率に発現低下し、miR-7が大腸癌において高率に発現増加することを見出し報告してきた。今回我々は、大腸腫瘍におけるmiR-143, -145, -7, -34aの発現について臨床検体を用いて解析し、大腸腫瘍の臨床病理学的な予後因子との関連ついて報告する。【方法】弧発性の大腸癌113例を用いてmiR-143, -145, -7, -34aの発現を調べた。予後因子としては進達度、進行度、病変の大きさや形態などの臨床病理学的因子を元に評価した。【成績】miR-143は80例(70.8%)、miR-145は84例(74.3%)、miR-34aは61例(54.0%)で発現が低下し、miR-7は81例(71.1%)で発現が増加していた。miR-143,-145,-34aの発現低下は進達度や進行度との関連は認めらなかった。miR-7の発現増加は進達度M、進行度0と進達度SM以深、進行度1以上では有意差をもって進達度SM以深、進行度1以上で発現増加症例が多かった。miR-34aは早期癌では隆起型の方が表面型に比べて発現低下の頻度が高かった。【結論】多くの大腸癌症例でmiR-143, -145, -34aが共に低発現を示し、miR-7は高発現を呈した。miR-143, -145, -34aの発現は大腸癌の診断に、またmiR-7の発現は大腸癌の治療方針決定の際に有用であると考えられた。以上の結果はmiRNAが進達度・進行度を規定する新しい腫瘍マーカーとなりうる可能性を示唆している。
索引用語 microRNA, 大腸癌予後因子