セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(機能性疾患)

タイトル 消P-544:

当科における過敏性腸症候群診療の現況と問題点

演者 筑木 隆雄(岡山大病院・消化器内科)
共同演者 岡田 裕之(岡山大病院・光学医療診療部), 山本 和秀(岡山大病院・消化器内科)
抄録 【目的】当科における過敏性腸症候群(IBS)診療の現況と問題点を調べるために,患者背景や治療方針について後ろ向きに検討した.
【対象と方法】対象は,2010年1月~2012年12月に当科でIBSと新たに診断された60歳以下の患者である.診断基準は,3か月以上 排便・排ガスで軽快する消化管症状を有し,血液検査あるいは大腸内視鏡で明らかな異常所見がないものとした.治療効果はカルテ記載をもとに「効果なし・効果はあるが不十分・十分な効果あり」の3段階に分けて評価した.
【結果】対象患者43例の内訳は,男21例・女22例,平均年齢36歳(14~59歳)であった.BMIの平均値 21.6(15.4~36),病型は下痢型25例・便秘型8例・混合型10例,診断までの罹患期間の平均 26か月(3~144か月),慢性疾患を有する患者 14例,上部消化管症状もある患者 15例,精神科通院 14例であった.診療した医師は11名であった.大腸内視鏡は36例で施行されていた.治療薬は,抗コリン剤16例・ポリカルボフィル9例・消化管運動調整薬 7例・5-HT3受容体拮抗薬 8例・漢方薬 20例・精神科系の薬物 14例・PPI併用 11例であった.使用された主な漢方薬は大建中湯9例・桂枝加芍薬湯3例であった.通院期間は平均9か月(0~36か月),通院継続患者13例であった.治療成績は十分な効果ありが67%・効果不十分14%・効果なし19%であった.維持療法(内服継続)は29例で行われていた.効果なしの1例と効果不十分の3例では,使用されていない薬剤を認めた.治療効果と患者背景・治療法との間には有意な相関は認めなかった.また,生活環境の変化で緩解した症例を3例,治療開始後の大腸内視鏡でIBSが否定され治療薬変更で治癒した症例を2例認めた.
【結語】当科におけるIBS診療での改善率は比較的高かったが,多くの症例で維持療法を必要としていた.効果が不十分な患者において投与されていない薬剤があることから,医師間での治療の違いをなくす必要性が示唆された.
索引用語 過敏性腸症候群, 内服治療