セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(症例報告)

タイトル 消P-548:

慢性偽牲腸閉塞症を主症状とした自己免疫性自律神経節障害の1例

演者 川西 幸貴(和歌山県立医大・2内科)
共同演者 森畠 康策(和歌山県立医大・2内科), 伊藤 大策(和歌山県立医大・2内科), 加藤 順(和歌山県立医大・2内科), 一瀬 雅夫(和歌山県立医大・2内科)
抄録 【症例】37歳,女性【主訴】腹痛【既往歴】20歳時虫垂炎手術【現病歴】前医で2008年からS状結腸軸捻転のため,内視鏡的整復を4回施行.しかし,腸管拡張が改善しないため,同年8月腹腔鏡補助下S状結腸切除術施行.その後も残存直腸が拡張するため,10月低位前方切除術施行.直腸の病理では神経節消失は認めず.基礎疾患に膠原病等も否定的であり,慢性偽性腸閉塞症(CIP)が疑われた.腸管拡張が残存し,2011年8月横行結腸人工肛門増設術施行.改善なく,11月右半結腸切除,回腸瘻増設術施行.その後も腸閉塞症状,腹痛が治まらず,2012年6月当科を受診.腹痛の増悪もあり,精査・加療目的で入院した.【入院後経過】残存した胃・腸管ガス著明.絶食,高カロリー輸液を行うが,腹痛の改善なし.入院時より低血圧があり,自律神経機能評価を行うも明らかな交感神経障害を認めず.そのため,自己免疫性自律神経節障害(AAG)を疑い,抗ganglionicアセチルコリン受容体抗体(抗gAChR抗体)を測定したところ陽性であった.治療として,コリンエステラーゼ阻害薬やステロイドを使用するが,症状の改善はみられず.単純血漿交換や二重膜濾過法を施行し,抗gAChR抗体は陰性化するが,症状の改善がみられず.その後,免疫調整剤の併用を行うが,改善みられず.胃・腸管の減圧目的で胃瘻及び腸瘻を内視鏡的に造設.上腹部症状はやや軽減.更に,免疫グロブリン療法を2週間行うも改善せず.これ以上の症状緩和が難しく,本人と相談し,退院された.【考察】CIPは原因不明の難治性疾患と考えられている.AAGの部分症状の一つとしてCIPがあるが,CIP症状を主症状とされることは世界的にも報告が少ない.CIPの原因が同定できずに特発性とされる症例も多いと考えられ,AAGがCIPの原因の一つとして認識すべきであり,今後の大きな展開を迎える可能性がある.ただ,AAGに効果的な治療薬がなく,更なる病態解明や治療薬の開発が期待される.
索引用語 慢性偽性腸閉塞症, 自己免疫性自律神経節障害