セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(その他1)

タイトル 消P-552:

大腸癌手術後に発症した虚血性大腸炎の臨床的検討

演者 佐藤 美信(藤田保健衛生大・下部消化管外科)
共同演者 前田 耕太郎(藤田保健衛生大・下部消化管外科), 升森 宏次(藤田保健衛生大・下部消化管外科), 小出 欣和(藤田保健衛生大・下部消化管外科), 松岡 宏(藤田保健衛生大・下部消化管外科), 勝野 秀稔(藤田保健衛生大・下部消化管外科), 塩田 規帆(藤田保健衛生大・下部消化管外科), 松岡 伸司(藤田保健衛生大・下部消化管外科), 八田 浩平(藤田保健衛生大・下部消化管外科), 遠山 邦宏(野垣病院・外科)
抄録 【目的】大腸癌術後に発症する虚血性大腸炎(POIC)の臨床的特徴について大腸癌非術後虚血性大腸炎(NOIC)と比較検討した.【方法】POIC13例の臨床病理学的項目および治療成績を非大腸癌術後虚血性大腸炎(NOIC)22例と比較検討した.虚血性大腸炎の診断は飯田らの診断基準に従った.【成績】POICで認められた壊疽型の1例を除く34例は一過性型であった.POICの全例で主幹動脈が根部で結紮切断されており,POICの発生率は同様な血管処理を行った手術の1.2%であった.大腸癌の病期によるPOICの発生率には差を認めなかったが,POICの9例(69.2%)が大腸癌術後5年以内に発症していた.一過性型において,NOICでは20例(90.9%)に虚血性大腸炎発症の危険因子となる基礎疾患や誘因を認めたのに対し,POICでは6例(50.0%)と有意に低率であった.POICの初発症状は腹痛4例(33.3%),血便7例(53.8%)で,NOICに比べて腹痛が有意に少なく,血便が有意に多かった.POICでは経過中に腹痛が出現した症例は5例(38.5%)と,NOICの18例(81.8%)に比べて有意に低率であった.POICでは病変の環周度が半周を越えたのは3例(23%)でNOICに比べて有意に低率で,発症時の白血球数が高値を示したのは2例(15.4%)とNOICに比べて少ない傾向を認めた.壊疽型は60歳代の女性で,高血圧のため内服治療中,右皮質下出血手術後45月,直腸癌術後41月であった.水頭症に対するVPシャント術後に便秘となり,POICを発症した.緊急手術を施行したが8月後に肺炎のため死亡した.【結論】大腸癌術後には基礎疾患や誘因を認めずに一過性型虚血性大腸炎を発症するが,軽症例が多かった.しかし重篤な基礎疾患や誘因を有する場合には壊疽型を発症する危険があり,慎重な経過観察が必要と考えられた.
索引用語 虚血性腸炎, 大腸癌