セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(その他5)

タイトル 消P-579:

ICUにおける抗潰瘍薬の過剰投与はMRSA腸炎の発生に関連する可能性がある

演者 佐藤 武揚(東北大病院・高度救命救急センター)
共同演者 久志本 成樹(東北大病院・高度救命救急センター)
抄録 はじめに: 集中治療患者ではストレス潰瘍の予防が重要でありH2ブロッカー(H2RA),プロトンポンプインヒビター (PPI)を用いることで重篤な出血を抑制できるがnosocomial pneumonia とClostridium Difficile infectionの増加が問題とされている.しかし広域抗菌薬投与下における胃内pHの上昇はMRSA腸炎に関与する可能性がある.本研究はH2RA,PPIを用いたストレス潰瘍予防とMRSA腸炎発生の関連を明らかにすることを目的とした.方法: 2008-2012年の間に当施設へ入室した4275例を対象として,制酸剤,整腸剤,広域抗菌薬の使用状況 とCD腸炎,MRSA腸炎の発生頻度 を検討した.結果: 制酸剤は1回投与量を一単位として1.58単位/日・症例から1.83単位/日・症例に増加した.整腸剤は2.2単位/日・症例から4.3単位/日・症例へと増加し,広域抗菌薬投与は5.31単位/症例から3.0単位/症例へと低下した.包括的な栄養療法により下痢の発生率は減少し,CD腸炎の発生は24例/年から0例まで低下した.しかしMRSA腸炎は2例/年から17例/年に増加した.消化性潰瘍の発生率は 約0.3%で変化していない. 考察: 胃酸を抑制することは消化性潰瘍の予防には効果的だが口腔内細菌が殺菌されずに腸に到達し,MRSA腸炎を増加させた恐れがある.これは広域抗菌薬の濫用,下痢とは別の機序で起こっており,制酸剤により起きている可能性がある.結語: ICUにおけるストレス性潰瘍の予防策として制酸剤投与は有効だが,その濫用によりMRSA腸炎が増加する恐れがあるため適正な使用が求められる.
索引用語 制酸剤, MRSA腸炎