セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

その他(医療総合1)

タイトル 消P-592:

プロトンポンプ抑制剤及びH2ブロッカー内服と感染性腸炎罹患

演者 林 秀樹(林病院)
共同演者 多保 孝典(林病院), 宮永 克也(林病院)
抄録 [目的] プロトンポンプ抑制剤(PPI)やH2ブロッカーは胃酸分泌抑制剤として消化性潰瘍や逆流性食道炎治療に有効であり広く処方されている.一方,胃酸分泌の抑制は経口感染症防御を弱める可能性がある.中規模一般病院における感染性腸炎ブレイクアウト対策管理期間における胃酸分泌抑制剤内服の感染性腸炎の罹患率に及ぼす影響をレトロスペクティブに検討した.[方法] 2012年度に許可病床数216の地域一般病院におけるノロウイルスによると確定されたものを含めた嘔吐と下痢を呈しその間に有熱症状のあった入院患者を感染性腸炎患者とした.看護部による症状と検査科による検出菌のサーベイランスから1日に5名の感染性腸炎の新規罹患を認めた日(第4日)から遡って最初の患者発生日を第1日とし,各種対策により48時間にわたる全入院患者の症状消失が確認されたアウトブレイク終息宣言までの25日間を検討した.短期入院患者を除くこの25日間における4日以上の入院患者を対象とした.PPI及びH2ブロッカーを胃酸抑制剤として検討対象とした.[成績] 対象入院患者270名中27名が感染性腸炎を罹患し,内17名ではノロウイルスを同定した.感染性腸炎罹患者の56%に,非罹患者の25%に胃酸分泌抑制剤が処方されていた.胃酸分泌抑制剤非内服者の感染性腸炎罹患率は6%であったが,内服者の罹患率は20%であった.[結論] 胃酸分泌抑制剤の内服患者では感染性腸炎の罹患率は非内服者に比して約3倍であった.プロトンポンプ抑制剤(PPI)やH2ブロッカーは胃酸分泌を抑制することにより感染性腸炎などの経口感染を助長する可能性が示唆され,処方適応に関して注意が必要と考えられる.
索引用語 感染性腸炎, 胃酸分泌抑制剤