セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

その他(医療総合2)

タイトル 消P-598:

NST活動におけるカルニチン欠乏評価の重要性に関する検討

演者 岩本 淳一(東京医大茨城医療センター・消化器内科)
共同演者 本多 彰(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 宮本 和宜(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 門馬 匡邦(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 小西 直樹(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 屋良 昭一郎(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 村上 昌(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 伊藤 真典(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 平山 剛(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 齋藤 吉史(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 池上 正(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 松崎 靖司(東京医大茨城医療センター・消化器内科)
抄録 【目的】カルニチンは脂肪酸のβ酸化に必須のビタミン様物質である.カルニチン欠乏症ではエネルギー源としての脂肪酸の利用が障害され,低ケトン血性低血糖,高アンモニア血症,筋力低下,心不全等の様々な症状が出現する.NST活動において栄養改善目的にアミノ酸や脂質が投与されても,カルニチンが不足すると脂質を利用できず,低血糖やアミノ酸の異化亢進を引き起こしうる.近年カルニチン欠乏症に対するカルニチン製剤投与が保険適応になったことから,経口摂取困難患者(TPN,胃瘻患者)や炎症性腸疾患患者におけるカルニチン欠乏の有無を評価した.【方法】2ヶ月から6年間(平均17ヶ月)の経口摂取困難患者23例(胃瘻・経管栄養患者12例,TPN患者11例 )および炎症性腸疾患IBD患者(潰瘍性大腸炎UC10例,クローン病CD10例)の血清カルニチン値をLC-MS/MS法で分析し,健常人50例と比較した.【成績】経口摂取困難患者のカルニチン値は36.2±10.3μMで,UCの70.9±18.9μM,CDの56.0±10.0μM,健常人の61.2±11.3μMと比べて約半分に低下していた(p<0.01).CDのカルニチン値も健常人より有意に低かったが,経口摂取困難患者程の低下は見られなかった.経口摂取困難患者について,経口摂取困難期間と血清カルニチン値の間には有意な相関はなく,4から6年間という長期の胃瘻栄養患者でも血清カルニチン値は30μM前後を保っていた.また,胃瘻・経管栄養管理患者とTPN管理患者の比較でも,両群間に明らかな差はなかった.【結論】少量でも経口摂取が可能なIBD患者では,血清カルニチン値は軽度低下に留まっていた.しかし,経口摂取が困難な患者では,比較的短期間でも健常者の半分程度にまで低下している症例があった.保険診療によるカルニチン測定はできない現状であるが,経口摂取困難患者ではカルニチン欠乏を念頭において,NSTでカルニチン製剤投与を推奨する必要性が示唆された.
索引用語 NST, カルニチン