セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

その他(腹膜)

タイトル 消P-601:

癌性腹水に対する新たな治療戦略 ~KM-CARTによる積極的症状緩和とオーダーメイド治療への応用~

演者 松崎 圭祐(要町病院・腹水治療センター)
共同演者
抄録 【目的】癌性腹水に伴う強い腹部膨満感や呼吸苦などはオピオイドでは緩和が困難で,患者のADLを著しく低下させて抗癌治療の中止につながる.我々は2009年から多量の癌性腹水に対応可能で,より簡便な新方式のKM-CARTシステムを考按し,積極的に施行している.腹水を全量抜水して症状緩和を行うとともに,濾過膜膜洗浄液から回収された多量の癌細胞をオーダーメイド癌治療につながると考えられたので報告する.【方法・成績】症例は卵巣癌:129例,大腸癌:95例,胃癌:85例,その他:335例の計644例である.内,承諾・回答の得られた87例でKM-CART前後で関連症状10項目について0から10の11段階で改善度を調査した.腹水は1.6~27.0L(平均6.8L)と可能な限り抜水し,所要時間は5~213分(平均61.7分)で,処理速度は平均9.3分/L,濾過濃縮液:100~2000ml(平均620ml)を作成し,点滴静注した.全症例で施行直後から腹部膨満感:8.1→2.0,嘔気:2.1→0.6,呼吸苦:3.7→1.3など,全てのの症状スコアは有意に低下し,ADL改善に極めて有効であった.腹囲は96.0→82.8cm,右下腿:33.3→30.5cmと有意に改善した.副作用は軽度の発熱のみで,ショックなど重篤な合併症は認められなかった.また闘病意欲の回復により化学療法を再開し,長期の在宅移行が可能となった症例を認めた.また回収された多量の癌細胞は培養も可能であり,回収細胞を活用したDCワクチン療法を施行した大腸癌症例では,KM-CARTとワクチン接種により,5か月間の在宅療養が可能であった.【結論】KM-CARTは安全性が高く,迅速な症状緩和と全身,栄養,免疫状態の改善が期待できる.さらに抗癌治療の再開から長期の症状緩和につながる症例もあり,癌性腹水に対して積極的に施行すべきと考えられた.また回収癌細胞を活用した新たなオーダーメイド癌治療への可能性が示唆された.
索引用語 癌性腹水, KM-CART