セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

その他(腹膜)

タイトル 消P-605:

腹膜播種に伴う癌性腹水へのtriamucinolone acetonide腹腔内投与の臨床的検討

演者 江口 考明(済生会中津病院・消化器内科)
共同演者 瀬戸川 勝敬(済生会中津病院・緩和ケア相談室), 黒澤 学(済生会中津病院・消化器内科), 岩坪 太郎(済生会中津病院・消化器内科), 長谷 善明(済生会中津病院・消化器内科), 安冨 栄一郎(済生会中津病院・消化器内科), 川口 真平(済生会中津病院・消化器内科), 古賀 英彬(済生会中津病院・消化器内科), 山下 博司(済生会中津病院・消化器内科), 福知 工(済生会中津病院・消化器内科), 伊藤 大(済生会中津病院・消化器内科), 蘆田 潔(済生会中津病院・消化器内科)
抄録 【目的】癌性腹水は穿刺を行ったとしても頻回となる割に症状緩和が乏しく,末期患者にとって改善し難い症状である.播種病変のVEGF産生をtriamucinolone acetonide(TA)がdown regulationし,腹水を改善する報告がある.今回TA腹腔内投与で症状改善に繋がるか検討した.【対象】2012年1月~2013年3月に癌性腹水で入院し,CT画像もしくは腹水細胞診で腹膜播種と確定診断した患者10例.【方法】腹腔穿刺により1l/hrの速度で腹水を採取後,腹腔内にTA 400mg/回投与した.【結果】患者平均年齢72.6±7.3歳,男:女/5例:5例.PS 1:2:3:4/2例:3例:3例:2例.腹水細菌培養陽性2例.膵癌:胃癌:大腸癌:原発不明癌/6例:2例:1例:1例.10例に合計14回の腹腔内投与を行った.平均腹水穿刺量1739±387ml,全例で腹腔内投与自体による循環動態の変化は見られなかったが,全例で血糖上昇があり投与後2週間はインスリン皮下注射が必要であった.TA投与以前は,腹水穿刺後に穿刺前同等まで体重増加を認め,再穿刺を行うまで平均4.8日であったが,TA腹腔内投与後は2例を除いて再穿刺を行わず死亡日まで腹水コントロール可能であった.また腹腔内投与後1週間の症状変化を検討したところ,体重は平均3.3kg減少し,1日尿量は1.88倍に増量した.腹部膨満感,腹痛を認めた症例は全例症状改善し,食事摂取量も全例で変化なしか増量した.また血清Crは平均0.08mg/dl改善し,血漿albuminは平均0.15g/dl増量した.しかし血清BUNは平均8.3mg/dl上昇した.TA腹腔内投与後からの生存期間は中央値25日(6~83日)であった.【考察】癌性腹水は消化器癌ターミナル期において難渋される合併症である.腹水穿刺のみでは腹水の再貯留も早く,症状緩和に頻回の穿刺が必要となり患者自身の苦痛も多い.TA腹腔内投与は血糖上昇という副作用はあるが,腹水再貯留を抑え,症状緩和につながる有益な治療法の可能性が示唆された.
索引用語 腹膜播種, トリアムシノロンアセトニド