セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

その他1

タイトル 消P-607:

保存的治療を行った門脈ガス血症14例の検討

演者 宮城 光正(福岡和白病院・外科)
共同演者 伊達 有作(福岡和白病院・外科), 濱田 麻穂(福岡和白病院・内科), 伊藤 陽平(福岡和白病院・内科), 徳永 裕貴(福岡和白病院・外科), 大田 修平(福岡和白病院・外科), 田原 正宏(福岡和白病院・外科)
抄録 【目的】門脈ガス血症(portal venous gas:PVG)は,その多くが腸管壊死を原因に発症する重篤かつ予後不良な徴候で,緊急開腹手術の適応と考えられてきた.しかし,近年,保存的治療によって軽快する報告も散見され,治療方針の決定には十分考慮する必要がある.そこで今回当院で過去約3年間に保存的治療を行ったPVG14例について検討した.【対象と方法】2009年11月から2013年1月までに腹部CTにおいてPVGの所見を認めた症例中,心肺蘇生法を施行した症例を除く14例を検討した.生存例と死亡例で予後に関連すると思われる因子を身体所見3項目(ショックバイタルの有無,圧痛の有無,腹膜刺激症状の有無),検査値5項目(CRP,Cre,CPK,WBC,BE)で検討し,t検定およびχ2乗検定を用いて解析した.【結果】14例のうちわけは,年齢平均79.9±8.6歳,男性5例,女性9例であった.14例中6例(42.9%)は軽快退院となったが,残り8例は治療中に死亡した.死亡率は,ショックバイタル(あり80%,なし44.4%),圧痛(あり57.1%,なし0%,不明80%),腹膜刺激症状(あり100%,なし16.7%,不明75%),CRP(≧10 60%,<10 55.6%),Cre(≧1.2 83.3%,<1.2 37.5%),CPK(≧230 100%,<230 50%),WBC(≧10000 40%,<10000 100%),BE(<-2.0 100%,≧-2.0 28.6%)であった.ショックバイタル,圧痛の有無については有意差を認めず,腹膜刺激症状の有無で有意差(p<0.01)を認めた.また,検査値ではBEが死亡した群で有意に低値であった.【考察】PVGは腸管壊死を意味する予後不良な徴候と考えられてきたが,14例中6例が保存的治療によって軽快した.よって,PVGは必ずしも腸管壊死を意味せず,手術の絶対的適応ではないと考えられた.しかし,その判断は難しく,全身状態,腹部の理学所見,検査値などの正確な把握が重要である.
索引用語 門脈ガス血症, 保存的加療