セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

その他1

タイトル 消P-608:

当科で経験した孤立性腹部内蔵動脈解離の4症例

演者 佐々尾 航(自治医大・消化器内科)
共同演者 竹澤 敬人(自治医大・消化器内科), 牛尾 純(自治医大・消化器内科), 野本 弘章(自治医大・消化器内科), 北村 絢(自治医大・消化器内科), 林 芳和(自治医大・消化器内科), 山本 博徳(自治医大・消化器内科), 菅野 健太郎(自治医大・消化器内科)
抄録 【目的】大動脈解離を伴わない孤立性腹部内蔵動脈(腹腔動脈や上腸間膜動脈)の解離は稀な疾患である.近年画像診断の発達により報告が増えてきているが,原因や治療については不明な点が多い.当科における自験例について報告し検討する.【結果】当科ではこれまで4例の孤立性腹部内蔵動脈解離を経験している.全例が男性で,平均年齢が54歳であった.自験例4例のうち,解離部位は上腸間膜動脈が3例,腹腔動脈が1例であった.3例は急性発症で,心窩部痛や背部痛,腰痛などを主訴に受診していた.急性発症ではない1例は膵腫瘍精査に際し,画像上偶然指摘されたものであった.4例中3例が高血圧を検診で指摘されたことがあったが放置していた.脂質異常は3例に認め,全例で喫煙歴を認めている.急性発症例はいずれも降圧療法が開始され,1例では偽腔閉塞後に抗血小板薬を開始されている.直近の症例が多く観察期間は短いが経過は良好である.【考察】医学中央雑誌による検索ではこれまで孤立性上腸間膜動脈解離は268例,孤立性腹腔動脈解離は56例の報告がある(会議録を含む).上腸間膜動脈と腹腔動脈解離を同時に認めた報告も見られた.中年男性に多く発症し,喫煙や高血圧,脂質異常が背景にあることが多いことが示唆されている.治療は腸管虚血がなければ保存的加療のみで,良好な経過をたどることが多い.保存的治療として降圧療法が中心であり,ほかに抗凝固療法を併用する報告も見られるが,使用法や使用すべき症例について一定の見解は得られていない.腸管虚血がある場合,動脈瘤化した場合に手術が選択されている.自験例も過去の報告と同様の背景であり,保存的治療により軽快するなど過去の報告と矛盾しなかった.【結語】予後良好な疾患ではあるが,急性腹症の鑑別疾患の一つとして念頭に置き,造影CTなどによる診断が重要である.
索引用語 孤立性上腸間膜動脈解離, 孤立性腹腔動脈解離