セッション情報 |
ワークショップ9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)
分子診断学からみた大腸腫瘍の治療成績と予後
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タイトル |
消W9-4:大腸癌の分子診断学におけるLINE-1メチル化レベルの重要性とmicroRNA発現の網羅的解析
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演者 |
能正 勝彦(札幌医大・1内科) |
共同演者 |
山本 博幸(札幌医大・1内科), 篠村 恭久(札幌医大・1内科) |
抄録 |
【目的】レトロトランスポゾンの一種であるlong interspersed element 1(LINE-1)はヒトゲノムの約17%を占めるといわれており、ゲノムワイドDNAメチル化の指標としても重要である。そのメチル化レベルが低下することによっておこるLINE-1の活性化は、染色体不安定性や遺伝子変異等を引き起こし、様々な癌の進展に重要な役割を果たすと考えられている。近年、我々はLINE-1メチル化レベルの低下した大腸癌は悪性度が高いことを報告した(Ogino S, Nosho K et al. J Natl Cancer Inst 2008)が、そのような大腸癌に進展しうる前癌病変の特徴は明らかではない。またエピジェネティックな変化を制御するmicroRNA(miRNA)とLINE-1との関連も解明されていない。【方法】パイロシークエンス法で大腸腺腫・癌(n=543)のLINE-1メチル化レベルを解析した。早期大腸腫瘍(腺腫・早期癌)を隆起型・平坦陥凹型・LST-G・LST-NGの4つのグループに分類し、進行癌のメチル化レベルと比較した。またmiRNAアレイを用いてLINE-1メチル化レベルが低下した癌で特徴的な発現変化を示すmiRNAを網羅的に解析した。【成績・結論】早期大腸腫瘍(n=276)のLINE-1メチル化レベルは進行癌症例(n=267)と比較して有意に高値であった(55.7% vs. 52.7%, p<0.0001)。一方、肉眼形態別に分類した早期大腸腫瘍のうち、他と比較して有意に低メチル化を示したグループが認められたため、これらがLINE-1メチル化レベルの低下した癌に進展する可能性が示唆された。またmiRNAアレイの検討ではLINE-1メチル化レベルが低下した癌で特徴的な発現変化を示すmiRNAがあり、新たな大腸癌のバイオマーカーとして診断・予後予測・治療効果等に応用できると考えられた。 |
索引用語 |
LINE-1, microRNA |