セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

胃-ESD5

タイトル 内P-27:

胃ESD後の潰瘍治癒は術中の潰瘍底損傷に規定される

演者 堀川 洋平(平鹿総合病院・消化器科)
共同演者 水溜 浩弥(平鹿総合病院・消化器科), 三森 展也(平鹿総合病院・消化器科), 加藤 雄平(平鹿総合病院・消化器科), 大久保 俊治(平鹿総合病院・消化器科)
抄録 【背景】近年では,胃表層型腫瘍に対する粘膜下層剥離術の技術・処置具は飛躍的に進歩し,症例の蓄積による治療戦略の進歩も相まって,その治療成績・安全性ともに大きく向上している.しかし,ESDの主たる偶発症である後出血はいまだ5%程度の症例に生じている.ESDによる人工潰瘍からの出血は,その潰瘍治癒促進によって予防できる可能性があり,潰瘍治癒を促進する要因の検討は重大な課題である.これまでに,PPIに代表される制酸剤や粘膜保護薬の治癒促進効果,瘢痕合併症例の治癒遅延などが報告されているが,一定の見解は得られていない.そこでわれわれは胃ESD4週後の潰瘍縮小率を測定し,人工潰瘍の治癒に影響を与える要因について,幅広く検討したので報告する.【方法】2009年1月~2012年4月までに当院で施行した胃ESD239症例251病変を対象とした. 全ての治療は300例以上のESDを経験した一人の術者によって施行された.ESD4週後に内視鏡下に潰瘍サイズを測定し, その縮小率からA) 縮小率90%未満,B) 縮小率90%以上 の2群に分け,患者背景・腫瘍の性質・胃粘膜障害薬の使用・施行時間・予防的止血術・ESD後使用薬剤などについて単変量/多変量解析を行った.【結果】ESD平均施行時間 (±SD) は76.34±53.45分,一括切除術は99.56%,一括完全切除率は92.14%であった. 偶発症については,穿孔率0%, 後出血率2.62%であった. ESD 4週後の平均潰瘍縮小率(±SD) は95.32% ± 8.12%であり,A群) 縮小率90%未満が12%, B群) 縮小率90%以上が88%であった.この2群間で比較検討したところ,Deeper tumor depth (P = 0.049; OR, 0.26; 95% CI, 0.07ー1.06) とlonger procedural time (P = 0.030; OR, 0.33; 95% CIー0.87)が潰瘍縮小率に影響を与える因子であった.【結論】今回の検討から,胃ESD後の潰瘍治癒は腫瘍深達度と施行時間に規定されることが示された.すなわちより深い,長時間にわたる潰瘍底の損傷が潰瘍治癒を遅延させるため,さらなる技術の改良が必要と考えられた.
索引用語 ESD, 潰瘍治癒