共同演者 |
加藤 元嗣(北海道大病院・光学医療診療部), 間部 克裕(北海道大病院・光学医療診療部), 大野 正芳(北海道大・消化器内科), 鈴木 美櫻(北海道大・消化器内科), 大森 沙織(北海道大・消化器内科), 高橋 正和(北海道大・消化器内科), 清水 勇一(北海道大・消化器内科), 坂本 直哉(北海道大・消化器内科) |
抄録 |
【背景と目的】内視鏡治療には,根治性に加え,低侵襲性と安全性が求められる.当院での胃ESD患者の75%は65歳以上の高齢者であり,さらに75歳以上の後期高齢者が35%をしめている.胃ESDにおける高齢者の周術期リスクについて検討した.【方法】2010年から2012年までに,当科で胃ESDが行われた65歳以上の高齢者117人について,後ろ向きに検討した.A群(65歳以上74歳の前期高齢者56名:平均年齢70歳)とB群(75歳以上の後期高齢者61名:平均年齢80歳)にわけて以下について検討した.1,治療成績,2,術中バイタルと合併症,3,術後検査所見,合併症と入院期間【成績】1,治療時間(A群: 70.9±52.3, B群: 78.4±51.9分 ),一括切除率(A群: 96.4, B群: 100%),断端陰性一括切除率(A群: 92.9, B群: 90.2%)には,いずれも両群で差はなかった.非治癒切除はA群7例,B群8例あり,計4例に外科手術が加えられた.2,術中使用したミダゾラム,ペンタゾシンの使用量には差がなかった.術中最低脈拍数がB群で有意に低く(A群: 63.8±14.1, B群: 58.8±12.0),酸素使用率も高かった(A群: 74.5, B群: 90.2%).術中穿孔はA群で1例,B群で3例に発生したが,全例保存的に軽快した.3,治療翌日の体温,WBC数,CRP値には,両群で差はなかった.誤嚥性肺炎は,偽診例も含め各群7例ずつでみられ,B群の2例では酸素投与を必要とした.後出血はB群でのみ3例(4.9%)で発生した.入院期間の延長は,A群で1例1日,B群で4例平均5.5日であった.【結論】治療成績と安全性から高齢者においても胃ESDは許容される.一方,周術期リスクとして,術中の迷走神経反射や術後の誤嚥性肺炎に留意する必要がある. |