セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

胃-ESD工夫1

タイトル 内P-39:

幽門輪にかかる病変に対するESDの治療戦略

演者 深津 和弘(和歌山県立医大・2内科)
共同演者 森畠 康策(和歌山県立医大・2内科), 井口 幹崇(和歌山県立医大・2内科)
抄録 目的:早期胃癌に対するESDは,病変の部位により難易度が異なる.幽門輪にかかる病変は筋層が垂直になりやすく,また肛門側のmargin確保のため球部内反転を要することもあり,難易度が高く,治療困難部位の一つである.今回我々は,幽門輪にかかる病変に対するESDの治療手技につき検討した.対象と方法:2002年2月から2013年2月まで当科で施行した胃腫瘍性病変に対して内視鏡治療を行った病変の中で幽門輪にかかる病変9例(男性6例,女性3例,平均年齢73.7±10.5(54-89)歳)を対象とした.今回,周辺切開を行い,粘膜下層剥離を完結せず最終スネアリングを行ったもESD手技と定義した.結果:平均腫瘍径は15.2±8.5mm,adenomaが4病変,tub1が4病変,papが1病変であった.内視鏡治療時に球部内反転を要したのは8例であった.一括切除率は89%(8/9),断端陽性率は22%(2/9)であった.その内1例は垂直断端陽性のため,追加手術を行った.術中マロリーワイス裂傷を22%(2/9)に認めたが,いずれもクリップによる縫縮を行い保存的に軽快した.術中穿孔,術後出血例はなく,追加手術例以外の術後狭窄は認めなかった.十二指腸球部内反転を要したESDの症例をビデオにて供覧する.結論:幽門輪にかかる病変の場合,とくに球部に伸展する病変であれば,forward-viewよりも病変を直視し,十分なsafety marginを確保するためには球部内反転操作が有用である.しかし,十二指腸粘膜は壁が薄く,幽門輪付近は筋層が垂直に位置すること,炎症や瘢痕による線維化を伴う可能性もあり,より慎重なESD手技が要求される.症例によっては反転操作が困難な場合もあり,処置可能な先端硬性部の短い細径スコープの開発も必要と考える.また術後幽門狭窄の可能性も考え,術後ステロイド局注やバルーン拡張などの対策も考慮すべきである.
索引用語 幽門輪, 球部内反転