抄録 |
日本国内では胃ESDは広く普及し,近年では把持型やハサミ型のナイフも市販され,内視鏡操作の要素を軽減して安定した切離を行える場面が多くなった.特に,SBナイフJrタイプ(住友ベークライト社製)は鋭利な切離操作により,従来のフックナイフと同様の効果を難渋な内視鏡操作を要さず得ることができるようになった.硬い線維化を伴う粘膜下層に対しても筋層の走行を想定しながらこれに平行に刃先をあてて把持し,胃内腔側に軽く先端を持ちあげ,視認確認の上で通電を施すと硬い線維も焦げ付くことなく一定の深度で鋭利に切離できた.出血時も鉗子を変更せずに止血鉗子として使用もでき,安定性と効率性を両立して切離操作を加えることが可能であった. 一方,海外でもESDは注目されつつあるが,操作の難しさから日本国内のように爆発的に普及するまでには至っていない.特に,処置具に通電を施しながら内視鏡と鉗子を協調運動させて切離する操作に難易度を感じるといった意見を多く耳にし,国内でも多くの症例をこなす必要までのない術者に同様の意見が聞かれた.また,海外の患者においては,粘膜や粘膜筋板が厚く粘膜下層に脂肪織が多く含まれ,日本で普及している従来手法では切離に難渋する場合も少なくない.これらの問題を解決するにあたりハサミ型ナイフは有効性が期待できると考えた. SBナイフJrタイプは大腸ESDを念頭に開発された小型のハサミ型ナイフであり,広範な胃内操作を効率よく行うには不適である.このため,先端部分を大型化して湾曲を加え,把持した際に滑りを防止するためごく細かな凹凸を備えた新たなハサミ型ナイフを検討中である.先端部分の湾曲は安全性を保った操作に有効であり,先細り形状と刃上の肉眼で視認できない程度の凹凸は視野を確保しながら確実に対象を把持することに寄与した.粘膜切開から剥離操作,止血操作まで難易度の高い部分でも安定して操作ができる様今後も改良を加える予定であるが,日本初の治療法がそれぞれの事情に合わせた工夫も加わりさらに国外へも広く普及するよう期待している. |