セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

胃-ESD治療成績2

タイトル 内P-56:

胃ESD後に遠隔転移再発をきたした症例の検討

演者 宮澤 正樹(富山県立中央病院・内科)
共同演者 松田 充(富山県立中央病院・内科), 酒井 明人(富山県立中央病院・内科), 野田 八嗣(富山県立中央病院・内科)
抄録 【背景】胃ESDは病変の確実な一括切除を目的とした手技であるが,適応拡大に伴い再発も一定頻度で認められる.再発様式としては局所再発が一般的であるが,遠隔転移再発は稀である.【目的】胃ESD後に遠隔転移再発をきたした症例の臨床的検討を行うこと.【方法】対象は2003年7月から2013年2月までに胃ESDを施行した1229例.うち遠隔転移再発をきたした2例の臨床病理学的特徴を検討した.【症例1】75歳男性.ネフローゼ症候群でプレドニゾロン,シクロホスファミドを内服中.胃体下部大彎に径70mm大の0-IIa+I(cT1b)病変を認め,生検で高分化型乳頭管状腺癌であった.画像上遠隔転移は認めずESDを予定したが,帯状疱疹のため3ヶ月遅れでの施行となった.ESDの際に粘膜下層に癌浸潤によると思われる線維化と筋層の牽引所見を認めたが,一括切除可能であった.切除標本は,病変最大径74mm,pSM2,ly1,v1,pVM1のESD適応外病変であった.ESD直後の腹部CTで多発肝転移を認めたため化学療法が施行されたが,8ヶ月目に他病死した.【症例2】81歳男性.EGDで胃体下部前壁に径20mm大の0-I病変(cT1b)を認め,生検で高分化型管状腺癌であった.画像上遠隔転移は認めずESDを施行したが,粘膜下層剥離の際に穿孔をきたした.粘膜下層から筋層にかけて癌浸潤と思われる線維化を認めたためESDは中止し,後日幽門側胃切除+D1郭清を施行した.切除標本は,pMP,ly1,v2のESD適応外病変であり,穿孔部位は癌巣先進部から僅かに離れていたが,剥離縁は筋層の癌巣近傍に達していた.手術根治度Aのため経過観察していたが,13ヶ月目に腹膜播種を認め,19ヶ月目に死亡した.【結語】胃ESD後の肝転移,腹膜播種を1例ずつ経験した.適応外病変の可能性が否定できない場合,遠隔転移を除外すべくESD直前に可能な限りの画像検索を行っておく必要があると思われた.また,pT1b2以深の病変に対するESDの際には穿孔に起因する腹膜播種のリスクがあり,ESDの適応拡大を進めるにあたっての問題点と考えられた.
索引用語 ESD, 再発