抄録 |
【はじめに】上部消化管内視鏡検査にて,あたかも皮膚にみられる鳥肌のように胃粘膜に均一な小顆粒状・結節状隆起が密集して認められるものを鳥肌状胃粘膜と呼ぶ.従来若年女性に多い生理的な現象と考えられていたが,近年では若年成人のHelicobacter pylori(以下H.pylori)感染者に多く認められ,消化性潰瘍や胃癌との合併症例も散見されるようになっている.今回,当院における鳥肌胃炎について臨床的に検討を行ったので,若干の文献的考察を加えて報告する.【方法】2008年3月から2013年2月の期間に,当院で13,411件の上部消化管内視鏡検査を施行した.そのうち,ファイリングシステムでの抽出と内視鏡専門2名によるダブルチェックの結果,最終的に鳥肌胃炎と診断した27症例について,年齢や男女比,H. pylori感染の有無,合併症の有無等を検討した.【結果】鳥肌胃炎27症例において男女比は1:2であった.年齢分布は20-30代に多く,平均年齢は40.6歳(18-72歳)で,男性では平均32.6歳 (18-40歳),女性では平均44.2歳 (31-72歳)であった.H.pylori感染は高率に陽性であり,背景胃粘膜はほぼ全例がClosed typeであった.発生部位はM・L領域が大部分を占めた.また,27症例中,8例に消化性潰瘍を認めた.悪性疾患の合併は認めなかった.心窩部痛などの自覚症状を伴った例は5例であった.また,経過中H.pylori除菌により鳥肌状胃粘膜が消失した例や,萎縮の進行に伴い鳥肌状胃粘膜が消失した例を認めた.【結論】当院における鳥肌胃炎は,諸家の報告通り,比較的若年の女性に多く,高率にH.pylori感染を伴っており,背景胃粘膜は萎縮に乏しい例が多かった.当院では胃癌の合併例は認めなかったが,胃癌の高リスク群の可能性が示唆されており,H.pylori除菌治療や,定期的な内視鏡検査による経過観察が必要と思われる. |