抄録 |
【背景】高齢者を中心に栄養投与方法のひとつとしてPEGが広く普及されつつある中で,PEG関連の内視鏡処置中に偶発的に胃癌が発見されるケースも増えてきている.今回我々はPEG造設あるいは交換時に発見された胃癌症例の背景や生命予後について検討した.【対象】2007年3月~2013年2月に当院でPEG造設あるいは交換時に発見された胃癌14例(男性10例,女性4例,平均84.1歳).【結果】基礎疾患として脳血管障害,誤嚥性肺炎,認知症のいずれかを全例に認めた.胃癌発見のタイミングは,造設前スクリーニング時5例,造設時5例,交換時4例であった.癌の進行度は,早期癌10例,進行癌4例であった.うち組織型の診断が可能であった癌は10例で,高分化型腺癌4例,高~中分化型腺癌5例, 乳頭腺癌1例であった.胃癌の治療としては,早期癌2例それぞれにESDとアルゴンプラズマ凝固(APC)を行った以外は全例無治療であった.造設前スクリーニング時に進行癌が発見されたが造設前に肺炎で死亡した1例以外は造設・交換は無事施行された.処置後の経過を確認し得た9例では生存期間中央値(胃癌発見からの)は425日であった.死因を確認できたのは4例で,肺炎2例,胃癌1例,他病死(肝不全)1例であった.【考察】PEG関連の内視鏡処置中に胃癌が発見されても,年齢や基礎疾患を背景に実際には癌の治療はされないことも多いと思われる.検討された施設毎にばらつきはあるものの,高齢者のPEG造設症例の生存期間中央値は432~753日とも報告されており,今回の胃癌症例の425日はほぼ遜色ないといえる.胃癌の併存があってもPEG造設あるいは交換を行い経管栄養を継続することは生命予後にそれほど影響しない可能性が示唆された. |