抄録 |
【目的】上部消化管内視鏡検査時のl-メントール製剤の有用性について検討する.【方法】2011年1月から2013年3月までの間に,当院にて上部消化管内視鏡検査時にl-メントール製剤を使用した514例,検査回数562件(経鼻内視鏡検査406例,検査回数442件及び経口内視鏡検査108例,検査回数120件)について,胃蠕動抑制効果及び有害事象の有無につき検討した.対象は男性194例,女性320例,年齢22~92歳,平均年齢54.6歳.l-メントール製剤20mlはすべて胃前庭部で散布した.胃蠕動はl-メントール製剤散布前後で丹羽分類で評価した.【成績】経鼻内視鏡検査でのl-メントール製剤散布前の胃蠕動は丹羽分類の第1度(蠕動なし)が検査回数423件(95.7%),第2度(軽度)が19件(4.3%)であり第3度(中等度)以上は認めなかった.経口内視鏡検査でのl-メントール製剤散布前の胃蠕動は丹羽分類の第1度が検査回数99件(82.5%),第2度が18件(15%),第3度が3例(2.5%)であり第4度以上は認めなかった.経鼻,経口内視鏡検査共に丹羽分類第2度以上の胃蠕動は,l-メントール製剤散布後何れも第1度に抑制された.また2011年1月以前に胃蠕動抑制の前処置を一切行わずに経鼻内視鏡検査を施行した892例検査回数975件の検討では,胃蠕動は丹羽分類第1度が検査回数944件(96.8%),第2度が31件(3.2%)であり観察上特に支障なかったが,丹羽分類第1度で生検を施行した93件のうち11件(11.8%)で生検中または生検施行後に第2度への胃蠕動の亢進を認めたが,l-メントール製剤を使用した経鼻内視鏡検査で生検を施行した57件では生検に伴う胃蠕動亢進は認めなかった.またl-メントール製剤による有害事象は認めなかった.【結論】l-メントール製剤による胃蠕動抑制効果は良好であり有害事象もなかった.経鼻内視鏡検査では胃蠕動に対する前処置なしでも観察上支障はないが,生検による胃蠕動亢進を抑制する上でl-メントール製剤は有用であった. |