セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

胃-腫瘍2

タイトル 内P-187:

まれな形態を示し内視鏡的に切除可能であった肺癌胃転移の1例

演者 戸川 保(国立福井病院・外科)
共同演者 成瀬 貴之(国立福井病院・外科), 上田 有紀(福井大・1外科), 大槻 忠良(福井大・1外科), 田畑 信輔(国立福井病院・外科), 恩地 英年(国立福井病院・外科), 木村 俊久(国立福井病院・外科)
抄録 【症例】77歳,男性【主訴】貧血【既往歴】平成18年,早期胆嚢癌のため胆嚢摘出術.平成21年,左肺癌(扁平上皮癌)のため肺切除術.平成22年,右肺癌(低分化腺癌)のため肺切除術【現病歴】肺癌術後で当院呼吸器外科に通院中であった.平成22年5月,進行する貧血のため輸血を要する状態となり,精査目的に上部消化管内視鏡検査を施行した.胃体上部大弯に白苔,びらんを伴う3cm大の有茎性ポリープ状の病変を2個認めた.生検で大型の異型核を有する細胞が多数認められ,未分化癌や肉腫の可能性が考えられたが確定診断は困難であった.原発性または転移性の胃悪性腫瘍であり貧血の原因であると考えられたため,確定診断および貧血の治療目的に切除する方針とした.平成22年6月,内視鏡的に茎部をスネアリングし2病変を切除した.切除標本の病理学的診断の結果,多型性の強い異型細胞が上皮様,肉腫瘍に増殖していた.免疫組織化学染色では,AE1/AE3(+),CK7(-),CK20(-),TTF-1(+)であり,既往の肺癌の組織所見ともあわせて,肺低分化腺癌の胃転移と診断した.切除後貧血は改善し輸血の必要なく経過した.平成24年11月多発脳転移が出現したが,胃局所の再発は認めていない.【考察】肺癌の胃転移はまれであり,その多くが粘膜下腫瘍様または進行胃癌様の形態を示す.診断時に切除可能なものは少なく,切除可能であっても胃切除または胃全摘が必要であり,同時に他臓器転移を伴うことも多いため切除後の生存期間は概して短期間であるとされる.本症例は有茎性のポリープ様の形態を示す病変であり,内視鏡的な切除が可能であった.切除2年半後に他臓器への転移が出現したものの,切除局所を含め胃内には再発なく経過しており極めてまれであると思われる.【結語】肺低分化腺癌の多発胃転移に対して内視鏡的切除を施行した.他臓器に転移再発を来したが,切除後輸血が不要となりQOLの改善が得られた.また,2年半の経過中局所再発を認めていない.
索引用語 転移性胃腫瘍, 肺癌