セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

胃-腫瘍2

タイトル 内P-188:

ESD2年半後に局所再発および多発肝転移をきたした胃大細胞神経内分泌癌の1剖検例

演者 柴田 喜明(多摩北部医療センター・消化器内科)
共同演者 今井 陽平(多摩北部医療センター・消化器内科), 伊藤 久美子(多摩北部医療センター・消化器内科), 佐野 弘仁(多摩北部医療センター・消化器内科), 永井 俊彦(多摩北部医療センター・消化器内科)
抄録 症例は80歳男性.2009年に噴門部後壁の10mm大IIc早期胃癌に対してESDを行った.病理組織検査結果は中分化型腺癌で,一部に粘液癌の混在を認めた.深達度SM1であったが,切除断端は水平,垂直方向ともに陰性であり,脈管侵襲は認めなかった.以後半年ごとに上部消化管内視鏡検査を行い経過をみていたが,術後24か月まで再発所見はみられなかった.
術後30か月後,ESD後の瘢痕部上に5cm大の2型の進行癌を認め,局所再発と診断した.再発時の病理組織検査結果は低分化型腺癌であった.腹部造影CT検査を行ったところ,多発肝転移を認め,stageIVと診断した.S1+Cisplatinによる化学療法を2クール施行したが,肝転移の増大を認め,Weekly paclitaxel療法に変更したところ,肝転移の一部縮小を認めたものの,その後再びProgressive diseaseとなり,永眠された.ESD後の全経過は36か月であった.
剖検を行ったところ,原発巣は高度な粘膜下浸潤を伴い奨膜に達しており,組織学的には,核の多形性を有する大型の腫瘍細胞が,巣状ないしシート状パターンを呈して,びまん性に浸潤していた.腫瘍細胞はGrimelius染色に陽性であり,免疫組織染色で,Chromogranin A陽性,CD56陽性,Ki-67 labeling indexは43.6%と高値であった. 腫瘍細胞の形態および病理学的検索の結果から,2010年のWHO分類に基づき,最終的に大細胞神経内分泌癌(LCNEC)と診断した.
胃内分泌細胞癌は,全胃癌の中で1%程度と稀な疾患とされる.ESD時の早期癌の段階から,2年半後に進行癌で再発するまでの内視鏡所見や臨床経過に加えて,剖検所見が得られた点で貴重な症例と思われた.本症例に若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 ESD, LCNEC