セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

胃-症例1

タイトル 内P-200:

約5年間内視鏡にて長期経過観察し得た胃底腺胃癌の一例

演者 安部 高志(鶴見病院・消化器科)
共同演者 永井 敬之(鶴見病院・消化器科), 川原 義成(鶴見病院・消化器科), 和氣 良仁(鶴見病院・消化器科), 梶本 展明(鶴見病院・消化器科), 首藤 充孝(鶴見病院・消化器科), 中嶋 宏(鶴見病院・消化器科), 大河原 均(鶴見病院・消化器科), 福永 淳治(福永胃腸科外科医院), 小山 恒男(佐久総合病院・胃腸科), 八尾 隆史(順天堂大・人体病理病態学)
抄録 【はじめに】胃底腺型胃癌は,近年提唱された,胃底腺への分化を示す低異型度分化型胃癌の新しい疾患概念である.今回我々は,約5年間内視鏡にて長期経過を追うことができた胃底腺型胃癌の一例を経験したので報告する.【症例】71歳女性.2007年8月上旬スクリーニング目的の上部消化管内視鏡検査を施行した際,萎縮のない粘膜を背景に,偶然胃体上部前壁側にIIa病変を認めた.生検ではGroup1(fundic gland polyp)であり,その後1年毎に内視鏡検査を行ったが,その間形態に著変を認めなかった.2011年12月上旬再度生検を行いGroup3(adenoma)との組織診を得,2012年3月上旬Total biopsy目的にてEMRを施行した.切除病理組織標本では,胃底腺主細胞に類似した腫瘍細胞が粘膜深層主体に増殖し,一部わずかに粘膜筋板を超えて粘膜下層へ浸潤していた.脈管侵襲は認めなかった.免疫染色では,pepsinogen-I陽性であり,胃底腺型胃癌と診断した.Ki-67標識率は1.9%と低率であった.現在まで再発は認めていない.【考察】胃底腺型胃癌は,高齢者のU領域に好発し,初期には0-IIa/0-IIc型の形態をとる.胃炎のない正常胃底腺粘膜の深層部から発生するため,小さなものでも高率に粘膜下層へと浸潤する.しかし,これまでの報告からは,低い細胞異型,脈管侵襲陰性,低い増殖活性,予後良好といったことなどから,悪性度は低いと考えられている.まだ症例の蓄積が少なく,発育進展様式や予後,臨床的意義など明らかとなっていない点も多く,今後の課題である.今回我々は約5年間という長期にわたり内視鏡所見の経過を追うことが出来た胃底腺型胃癌の一例を経験した.貴重な症例と考え,若干の文献を踏まえ,報告する.
索引用語 胃癌, 胃底腺