セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

胃-症例3

タイトル 内P-208:

Upside down stomachを呈した食道裂孔ヘルニアの2例

演者 香田 正晴(国立米子医療センター・消化器内科)
共同演者 松永 佳子(国立米子医療センター・消化器内科), 片山 俊介(国立米子医療センター・消化器内科), 山本 哲夫(国立米子医療センター・消化器内科)
抄録 【症例1】69歳,女性【経過】2012年1月○日より嘔気,嘔吐を呈し吐物に血液混入を認め当科紹介入院.上部消化管内視鏡検査で,Mallory-Weiss症候群の所見と胃体部中心に残渣及び血液の貯留を認めた.上部消化管造影検査では,著明な食道裂孔ヘルニアを認め,胃前庭部が縦隔内に脱出していた.CT検査では,横隔膜ヘルニアから腹腔内構造物の縦隔内への脱出を認め,胃は下方から頭側に上行してループ形成し体部で急峻な狭窄を認めた.以上から食道裂孔ヘルニアに胃軸捻転を合併したupside down stomachと診断し,待機的手術として食道裂孔縫縮術とToupet法による噴門形成術を施行した.【症例2】82歳,女性【経過】2012年12月○日より嘔気,嘔吐,上腹部痛を認め当院救急外来受診.上部消化管内視鏡検査で,著明な食道裂孔ヘルニアと逆流性食道炎を認めたが,内視鏡は胃の変形のため幽門側に到達することは出来なかった.上部消化管造影検査では,著明なヘルニアと胃の大部分の縦隔内へ脱出を認め,造影剤が流入すると胃体部がヘルニア嚢を介し腹腔内に落ち込む変化が認められた.またCT検査では,食事摂取状況でヘルニアを介して胃角部~前庭部が腹腔内と縦隔内を往復する状態と判断され,upside down stomachとして待機的に食道裂孔縫縮術とToupet 法による噴門形成術を施行した.【考察】食道裂孔ヘルニアは比較的頻度が高い疾患であるが,胃の軸捻転を伴い胸腔内にほぼ全胃が脱出したupside down stomachを呈することは稀である.本病態は食後心窩部痛・胸痛,嘔吐,呼吸困難,胃食道逆流症状,嚥下困難などをきたし,急性胃絞扼症を起こすこともあり,本症例のように外科的手術を施行されることが多い.一方で食道裂孔ヘルニアの発生要因としては加齢による横隔膜食道靭帯の脆弱性が考えられており,高齢化社会においては留意すべき疾患と考えられる.
索引用語 食道裂孔ヘルニア, Upside down stomach