セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

胃-症例3

タイトル 内P-209:

内視鏡的に切除した胃底腺型胃癌の2例

演者 田中 一平(順天堂大練馬病院・消化器内科)
共同演者 小沼 宏徳(順天堂大練馬病院・消化器内科), 野村 亮介(順天堂大練馬病院・消化器内科), 嶋田 裕慈(順天堂大練馬病院・消化器内科), 森 広樹(順天堂大練馬病院・消化器内科), 吉村 美保(順天堂大練馬病院・消化器内科), 川邉 正人(順天堂大練馬病院・消化器内科), 宮崎 招久(順天堂大練馬病院・消化器内科), 上山 浩也(順天堂大・消化器内科), 渡辺 純夫(順天堂大・消化器内科)
抄録 1症例目は77歳女性.近医にて上部消化管内視鏡検査施行したところ胃体中部大弯前壁に約6mm大で退色調のIIc病変を認めた.NBI拡大観察でwhite zoneは辺縁にて拡大を認めるもほぼ消失しており,内部には血管の拡張や蛇行あり,Mesh patternやLoop patternなどの高分化型腺癌に特徴的な所見は認めなかった.生検の結果,管状腺癌を認めた.当院にて内視鏡的粘膜下層剥離術を施行し,合併症なく腫瘍を一括切除した.病理所見では,HE染色にて核の腫大と重層化を認め粘膜深層を中心に異型腺管の密な増生を認めた.腫瘍細胞は好塩基性であり主細胞に類似した形態を持っていた.免疫染色ではMUC6陽性,MUC2陰性であり,pepsinogen1陽性であることから主細胞優位型の胃底腺型胃癌と診断された.断端は陰性,脈管侵襲も陰性,その後再発は認められていない.2症例目は60歳女性.検診で穹窿部大弯に15mm大でやや退色調のIIa+IIc病変を認めた.NBIではwhite zoneの拡大,内部には血管の拡張と蛇行が認められた.生検の結果,管状腺癌が認められた.当院にて内視鏡的粘膜下層剥離術を施行し合併症なく腫瘍を一括切除した.病理所見は1症例目と同様であり,胃底腺型胃癌の診断となった.筋板からの距離が1600μmで深部断端陽性を疑わせる所見あり,また脈管侵襲陽性で追加切除の適応となった.胃全摘術施行したが検体所見に腫瘍細胞は認めなかった.その後,再発は認められていない.胃底腺型胃癌は高齢者の胃上部の胃炎のない正常胃底腺粘膜の深層部から発生し,初期には0-II/0-IIc型の形態をとり,小さいものでも効率にSMへ浸潤する.悪性度に関しては,特に小さいものでは低い細胞異型,脈管浸潤陰性,低い増殖活性,p53蛋白過剰発現なく,予後良好といわれている.今回深達度の違う胃底腺型胃癌を2症例経験した.今後ヘリコバクターピロリ陰性の粘膜に発生する新しい胃癌として注目されており,内視鏡像と病理学的所見を中心に文献学的考察を加えて発表する.
索引用語 胃底腺型胃癌, 主細胞優位型