セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

胃-症例4

タイトル 内P-216:

生検施行後に急激な形態変化をきたした続発性胃壁膿瘍の1例

演者 柴 昌子(阿南医師会中央病院・内科)
共同演者 面家 敏宏(阿南医師会中央病院・内科), 日比野 真吾(日比野病院)
抄録 胃壁膿瘍とは,胃蜂窩織炎の限局性病変として膿瘍形成にいたる胃の非特異的化膿性疾患である.成因として胃炎,胃潰瘍,異物から生ずる原発性と他臓器感染巣からの波及による続発性に分類されている.胃壁膿瘍は稀な疾患であり,画像上では胃粘膜下腫瘍の像を呈する.今回我々は,生検施行後に急激に粘膜下腫瘍の形態変化をきたした続発性胃壁膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は70代女性.主訴は,全身倦怠感,前胸部つまり感.糖尿病にて近医通院中.20XX年9月頃より全身倦怠感,10月頃より前胸部つまり感出現.同年11月中旬,当院受診.血液検査では白血球9,590/mm3,CRP8.53mg/dlと炎症反応の上昇を認めていた.受診日の腹部CT検査にて肝左葉外側に突出する約4cm大の低吸収SOLと,胃下部前壁の壁外性に突出する約8cm大の腫瘤様病変が指摘された.同日入院.入院第2病日に上部内視鏡検査を施行.前庭部前壁に表面平滑な巨大粘膜下腫瘍様隆起性病変を認めた.Cushion signは陽性で,隆起頂部より生検を2個施行したが,Group1で悪性所見は認めなかった.入院第3病日,ダイナミック造影CT検査を施行.胃腫瘤様病変辺縁は造影されるも,内部の大部分は液体成分であった.肝病変も内部不均一な腫瘍と思われた.入院第9病日,再度上部内視鏡検査を施行したところ,前庭部の粘膜下腫瘍は急激に縮小していた.入院第15病日,幽門側胃切除術,肝部分切除術を施行した.病理所見により,隣接する肝膿瘍からの直接感染により発症した続発性胃壁膿瘍と診断した.胃壁膿瘍の治療は,外科治療が第一に行われてきたが,近年では超音波内視鏡検査によるドレナージ術が行われるようになっている.本例は生検を契機に,緊満していた固有筋層内の膿瘍が自然排膿された可能性が示唆された.急激な形態変化をきたす胃粘膜下腫瘍の診断に,胃壁膿瘍も念頭におく必要があると考えられた.
索引用語 胃壁膿瘍, 肝膿瘍