抄録 |
【目的】経鼻内視鏡はその解像度や性能の向上により進化の一途をたどっている.将来の実地医家において,消化器スクリーニング検査では患者の受容度や診断能力の高さゆえ,通常径内視鏡にとって代わるかもしれない.当科ではそれに加え,小回りの利く内視鏡として,消化管治療に応用することで一定の成果をあげている.当院倫理委員会の承認と,インフォームドコンセントのもとに実施している手技を述べる.また経鼻内視鏡の前処置法において,「スティック法」を採用している施設が多いが,経鼻内視鏡件数が多い施設では検査の動線が複雑化し,時間のロスにより業務に支障をきたす.そこで我々は「ナチュラルドロップ法」と称した方法を採用しており,効果をあげている,検査成績について述べる.しかしそれでも挿入困難例は存在するが,そのトラブルシューティングとして,経鼻内視鏡スコープを経口的に挿入する事を推奨している.極細径スコープ専用マウスピースを使用した舌スコープ軟性部と舌根部角度に着目し,経鼻群,経口+専用マウスピース群,経口群の成績について前向きに検討を行い,専用マウスピース群の有用性を確認した.アンケート結果も合わせて述べる.【方法】使用現況の一例を示す.1)口腔内反転を使った経鼻経皮内視鏡的胃瘻造設術 2)経胃瘻的直接小腸瘻造設術3)経鼻内視鏡的イレウス管挿入術・経胃瘻的イレウス管挿入術4)経鼻的内視鏡的逆行性膵胆管造影5)経鼻的直接胆管内視鏡6)ガイドチューブ付先端フード装着下で経鼻内視鏡を用いた経鼻内視鏡的粘膜切除術や内視鏡的止血術7)経鼻内視鏡を用いた気管支鏡検査・治療8)内視鏡的胃壁全層切除術において腹腔内から反転し漿膜側を観察する応用法【結論】経鼻内視鏡は,単なる上部消化管スクリーニング検査のためだけにとどまらず,「細くしなやか」という最大のメリットを活用した,別視線での新たな内視鏡治療に発展していく可能性を秘めている. |