セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

十二指腸-腫瘍

タイトル 内P-261:

出血を繰り返し診断に苦慮した十二指腸癌の一手術例

演者 田中 さゆり(川崎病院・消化器内科)
共同演者 青木 領太(川崎病院・消化器内科), 西田 悠(川崎病院・消化器内科), 竹内 庸浩(川崎病院・消化器内科), 野村 祐介(川崎病院・消化器内科), 多田 秀敏(川崎病院・消化器内科), 前田 哲男(川崎病院・消化器内科)
抄録 【症例】86歳,男性【主訴】タール便【既往歴】慢性心不全,心房細動,陳旧性脳梗塞(ダビガトラン,シロスタゾール内服中)【現病歴】2012年4月に慢性心不全増悪で当院循環器内科入院.入院中にタール便と貧血進行を認め,当科紹介.【経過】上部・下部消化管内視鏡検査(GIF・CF)を施行したところ出血源の同定に至らず.カプセル小腸内視鏡を施行すると上部空腸に血液の貯留を認めた.シングルバルーン小腸内視鏡を施行すると十二指腸球部に新鮮血を認め,出血源と判断し再度GIFを施行した.十二指腸球部後壁に前回には認めなかった出血を伴う潰瘍性病変を認め,内視鏡的止血術(HSE局注)を施行した.止血処置後,貧血の進行なく経過し退院となった.しかし,その後タール便と貧血の進行を繰り返し,その都度数回にわたり内視鏡的止血術と輸血を行ったが,止血に至らず,外科的治療の適応と判断した.術前精査として10月上旬に施行したGIFで,細径内視鏡を用い十二指腸球部内で反転観察したところ,潰瘍性病変ではなく1型の腫瘍であることが判明した.10月中旬十二指腸部分切除術を施行した.病理診断は,十二指腸癌,リンパ節転移であった.高齢であるため追加切除,化学療法などは行わない方針となった.その後貧血の進行は認めず,術後経過良好であり,11月下旬退院となる.【考察】本症例では,何度も十二指腸からの出血が持続していたが,病変が十二指腸球部後壁の幽門輪付近に存在し,内視鏡で非常に観察しづらい部位であるため,病変の全体像の把握が困難で,潰瘍性病変からの出血と考えられていた.細径内視鏡を用い十二指腸球部内で反転観察したところ,ようやく十二指腸腫瘍と診断できた.非常に診断に苦慮した十二指腸癌の一手術例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語 十二指腸癌, 出血