セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

小腸-症例その他1

タイトル 内P-279:

骨髄異形成症候群に合併した出血性多発腸潰瘍の一例

演者 前田 瑛美子(香川大附属病院・消化器・神経内科)
共同演者 尾立 磨琴(香川大附属病院・消化器・神経内科), 森 宏仁(香川大附属病院・消化器・神経内科), 小原 英幹(香川大附属病院・消化器・神経内科), 西山 典子(香川大附属病院・消化器・神経内科), 藤原 新太郎(香川大附属病院・消化器・神経内科), 正木 勉(香川大附属病院・消化器・神経内科), 大浦 杏子(KKR高松病院・内科), 安田 貢(KKR高松病院・内科), 前田 剛(KKR高松病院・内科)
抄録 【症例】70歳代男性.多量の下血,血便を主訴に前医入院.下部消化管内視鏡検査(TCS)にて終末回腸に数個の潰瘍と直腸に不整形びらんを認めた.絶食,輸血にて貧血は改善し,食事を開始した.また,入院時の血液検査にて血球の形態異常,汎血球減少が認められ,trisomy 8を合併した骨髄異形成症候群(MDS)と診断した.第25病日に再度下血があり,TCSにてS状結腸より口側に多量の凝血塊を認め,小腸出血が疑われた.再度絶食,輸血にて加療するも止血困難であり,更なる精査加療目的に当院紹介となった.入院1日目に行ったTCSでは腸管内に血液と凝血塊を認めたが,明らかな出血源は認めなかった.入院4日目にカプセル内視鏡検査を施行し,中部~下部小腸に多発性びらんと小潰瘍を認めた.入院7日目にダブルバルーン内視鏡を施行.びらんと小潰瘍から生検を施行したが特異的炎症所見は認めなかった.診断に難渋し確定診断には至らなかったが,文献的にTrisomy 8を有するMDSにはベーチェット病を合併する頻度が高く,文献報告例の治療に準じてプレドニゾロン,メサラジンの投与を開始した.自覚症状や下血もなく全身状態は良好で,41日目に退院となった.現在,プレドニゾロンを漸減し,経過は良好である.【考察】MDSは様々な消化管疾患を合併することが知られている.とりわけベーチェット病に関する報告は多く,高率にtrisomy 8の染色体異常が見られる.治療として確立されたものはないが,プレドニゾロンやメサラジンによる治療が奏功した例が報告されている.本症例はベーチェット病やクローン病などの診断基準を満たさず,多発する小腸,大腸の小潰瘍,びらん性病変という診断しかできなかったが,プレドニゾロンとメサラジンによる治療が奏功した.MDS患者に発熱,腹痛,血便を認める場合は,腸管ベーチェット病の可能性を念頭におき,診断治療の確立には更なる症例の集積が望まれる.
索引用語 骨髄異形成症候群, 消化管出血