セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

小腸-症例その他2

タイトル 内P-283:

内視鏡的に切除することが可能であった小腸炎症性繊維性ポリープの一例

演者 石井 道治(清恵会病院)
共同演者 星本 真弘(清恵会病院), 綛田 真也(清恵会病院), 村居 晴洋(清恵会病院), 北岡 治子(清恵会病院)
抄録 【症例】80歳女性【既往歴】糖尿病【現病歴】平成24年5月頃からの食欲低下を主訴に精査目的で入院.【経過】入院時の血液検査にてHb 8.5 g/dLと貧血を認め, 腹部CTで回腸末端の壁肥厚を認めた. 大腸内視鏡検査を施行したところ回腸末端に長径50mm, 短径30mm程度の陰茎様の隆起型腫瘤を認めた. 同部位から生検したが肉芽組織を認めるのみであった. サイズが比較的大きく貧血の原因となっている可能性や, 悪性疾患の可能性もあることを考慮し, 腫瘍を切除することが望ましいと判断した. 患者が高齢でADLも悪いという背景もあって内視鏡的切除を施行することにした. 切除標本の病理組織検査では, 粘膜筋板の挙上を伴う有茎性ポリープで, 繊維芽細胞, 組織球, 内腔の拡張した毛細血管の増生より成る肉芽様組織であり, 全般にわたって多くの好酸球, 好中球, リンパ球, 形質細胞の浸潤を認め, 炎症性繊維性ポリープ(IFP)と診断された. 組織学的に完全切除が得られており術後の経過も良好であった.【考察】IFPは1920年にKonjetznyが胃の好酸球浸潤を伴う粘膜下腫瘍に対してpolypoid fibromaとして報告したのが最初とされ, 消化管の粘膜下層から粘膜固有層を主座とし, 粘膜障害に対する過剰な修復反応を奮起して生ずる炎症性病変と推察されているが, いまだ原因不明の非腫瘍性良性疾患である. IFPの組織学的特徴は(1)病巣が粘膜下に存在, (2)繊維芽細胞, 繊維細胞, 膠原細胞などからなる結合組織の増生, (3)毛細血管などの小血管の増生, (4)好酸球細胞を中心とした炎症細胞の浸潤とされる. 小腸から発生したIFP症例のほとんどは腹痛や血便で受診し, 検査で腸重積が疑われ緊急手術にて切除された切除標本の病理学的診断で診断が確定している.またIFPは発生母地が粘膜下層であることで, 内視鏡による生検での術前診断は極めて困難とされる. 今回我々は腹部症状を認めない患者の回腸にIFPを認め, 内視鏡的切除にて治療し得た症例を経験したので, 文献学的考察を加えて報告する.
索引用語 小腸, 炎症性繊維性ポリープ