セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

小腸-症例その他2

タイトル 内P-284:

腸重積を繰り返し術前に内視鏡観察が可能であった回腸脂肪腫の1例

演者 宮本 和也(国立岩国医療センター・消化器内科)
共同演者 横峰 和典(国立岩国医療センター・消化器内科), 井川 翔子(国立岩国医療センター・消化器内科), 皿谷 洋祐(国立岩国医療センター・消化器内科), 平田 尚志(国立岩国医療センター・消化器内科), 谷岡 大輔(国立岩国医療センター・消化器内科), 田中 盛富(国立岩国医療センター・消化器内科), 藤本 剛(国立岩国医療センター・消化器内科), 宮下 真奈備(国立岩国医療センター・消化器内科), 田中 彰一(国立岩国医療センター・消化器内科)
抄録 症例は50歳代の男性.2011年の検診で便潜血を指摘されたが放置していた.2012年秋より間歇的な腹部膨満感を自覚していた.2012年の検診でも便潜血を指摘され下部消化管内視鏡検査を施行したところ,下行結腸,S状結腸,直腸にポリープを認め,回腸末端に腫瘤を認めた.大腸ポリープに関してはEMRを施行し,病理組織結果はいずれも線腫であった.回腸末端の腫瘤は,大きさは4cm程で表面粘膜は腫大した絨毛構造が認められ,発赤調を呈していた.腫瘤の基部はバウヒン弁より15cm程口側にあるが,バウヒン弁は開大しており腫瘤が上行結腸側へ頻回に脱出していることを示唆する所見であった.腫瘤は固く,内視鏡的にはhamartomaやinflammatory fibroid polypを第一に考えた.生検では炎症性の変化のみであった.注腸造影検査では,回腸末端に可動性のある有茎性の腫瘤を認め,腫瘤の表面は不整で結節様であった.腹部CTでは,回盲部に約3cmの腫瘤を認め,この腫瘤を先進部として回腸末端が上行結腸に重積していた.腫瘤は脂肪と同等のCT値を示しており脂肪腫と考えられた.明らかに悪性を示唆する所見はなく,腹腔鏡補助下の小腸部分切除術を施行した.摘出した腫瘍は径40mmであり,病理組織学的には粘膜下層において,薄い線維性被膜に被われた成熟脂肪細胞が薄い線維性隔壁で分画され増生していた.表面にはびらん,肉芽化,炎症細胞浸潤,線維芽細胞の増生を認めたが,粘膜上皮に腫瘍性変化はみられなかった.回腸脂肪腫の多くは腸重積等の有症状を契機として発見されており,本症例のように粘膜表面には物理的刺激によるびらんや発赤といった炎症所見を認めている報告例が多い.黄色調の表面平滑な粘膜下腫瘍様の肉眼形態を呈する典型的な大腸脂肪腫とは異なった肉眼形態を呈しており,内視鏡診断において示唆に富む症例と考えられたため,文献的考察をふまえて報告する.
索引用語 回腸脂肪腫, 内視鏡