セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

小腸-症例その他3

タイトル 内P-287:

強皮症に合併し,興味深い内視鏡所見を呈したcollagenous sprueの1例

演者 坪内 直子(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 田中 啓仁(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学), 田口 宏樹(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学), 中澤 潤一(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学), 上村 修司(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学), 沼田 政嗣(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学), 船川 慶太(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学), 藤田 浩(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学), 井戸 章雄(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【症例】75歳女性.頻回の水様下痢が数ヶ月持続し,全身浮腫が出現した.手指の浮腫様硬化と,抗核抗体及び抗Scl-70抗体陽性,皮膚生検による真皮内の膠原線維の増加の所見から,強皮症と診断された.持続する下痢と低アルブミン血症の精査目的で当科入院.入院時はAlb 1.4g/dlと低値で,軽度の炎症所見も認めた.上部及び下部消化管内視鏡検査では,胃と大腸に異常所見は認めなかった.カプセル内視鏡検査(CE)及びダブルバルーン内視鏡検査(DBE)では,空腸と回腸のほぼ全域に絨毛の脱落と多発潰瘍,粘膜の浮腫を認めた.中部回腸からの生検では,回腸粘膜の絨毛が脱落し,上皮下に厚さ40μmのcollagen bandを認めた.これらの所見からcollagenous sprueと診断し, 絶食,高カロリー輸液による治療を行った.炎症所見は速やかに正常化し,下痢は消失した.高カロリー輸液開始3週間後のDBEでは,潰瘍の治癒傾向を認めるものの,絨毛の再生は確認できず,collagen bandも残存していた.絶食では十分な治療効果が得られないと判断し,PSL 0.5mg/kgで開始した.しかし,敗血症,偽膜性腸炎を合併したため,PSLは減量し,中止した.偽膜性腸炎の改善後にCE,DBEを施行したところ,空腸及び回腸の絨毛の再生を認めた.成分栄養剤の経口摂取を開始して,栄養状態は改善し,下痢の再燃も認めなかった.
 また,本例の皮膚および小腸組織についてcollagen I,II, III,IV抗体による免疫染色を行った.皮膚の膠原線維と小腸のcollagen bandはいずれもcollagen I,III,IV抗体陽性であり,皮膚と小腸の病変は関連する可能性が考えられた.【考察】Collagenous sprueは,重症の吸収不良症候群を呈する疾患で,世界でもこれまで約60例の報告しかない稀な疾患であり,本邦での報告はない.加えて,本例は強皮症に合併し,経過中興味深い内視鏡所見を呈したことから,文献的考察を加え報告する.
索引用語 collagenous sprue, 小腸