セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

小腸-NSAIDs小腸粘膜傷害

タイトル 内P-296:

シングルバルーン小腸内視鏡によって手術を回避し得た多発するNSAIDs小腸潰瘍の一症例

演者 西田 悠(川崎病院・消化器内科)
共同演者 田中 さゆり(川崎病院・消化器内科), 青木 領太(川崎病院・消化器内科), 竹内 庸浩(川崎病院・消化器内科), 野村 祐介(川崎病院・消化器内科), 多田 秀敏(川崎病院・消化器内科), 前田 哲男(川崎病院・消化器内科)
抄録 【症例】71歳,男性【既往歴】2型糖尿病,高脂血症【現病歴】平成24年9月中旬に自転車で転倒し左アキレス腱断裂により当院整形外科入院し件縫合術を施行.第7病日に腹痛が出現し,小腸イレウスを指摘され当科へ転科.【入院経過】転科後絶食にて経過観察するも改善なく第9病日にイレウスチューブを挿入.速やかに症状改善し第14病日にイレウス解除を確認しチューブを抜去.しかし,食事開始するとイレウス再発.第20病日にイレウスチューブを再挿入.再度症状改善するが,食事開始するとイレウスを再発.第33病日に経肛門小腸内視鏡(SBE)を施行すると回腸に膜様狭窄を認めた.経口SBEも施行すると同様の膜様狭窄を認めスコープの通過は出来なかった.バルーン拡張(15mm)を施行するとすぐ肛門側に同様の狭窄を認めた.計3ヶ所狭窄部を拡張.ガストロフラフィン造影すると肛門側に多数の狭窄病変を認めた.その後4回に分けて経口SBEを施行し計22ヶ所(のべ49ヶ所)の狭窄病変を拡張し全小腸が開通.その後一度イレウスの再発を認め11ヶ所で再狭窄を認めバルーン拡張.術後イレウスの再発を認めず12月下旬に退院.【考察】本症例では,アキレス腱断裂の手術前後に頻回のNSAIDsを使用しておりNSAIDs小腸潰瘍を疑った.NSAIDs潰瘍に伴う狭窄ではバルーン拡張が治療の第一選択であるが,再発を繰り返し,また多数認める場合には手術も選択肢となり得る.しかし,手術を選択した場合の小腸の切除範囲が大きくなる可能性や糖尿病の既往も考慮し術後のQOLの低下が容易に予想された.そこで長期にわたったものの内視鏡的治療を選択し最終的に全小腸で狭窄の解除をし得た.退院後は普通食を摂取可能であり,患者のQOLを保つためにSBEでのバルーン拡張術は有意義な手段であると思われたため,若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語 バルーン拡張, NSAIDs潰瘍