セッション情報 ワークショップ9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

分子診断学からみた大腸腫瘍の治療成績と予後

タイトル 内W9-7:

大腸癌細胞のEpidermal Growth Factor Receptor(EGFR)を標的とした分子イメージング ―抗EGFR抗体薬の効果予測と効果判定を含めて―

演者 六車 直樹(徳島大・消化器内科)
共同演者 岡本 耕一(徳島大・消化器内科), 高山 哲治(徳島大・消化器内科)
抄録 【目的】大腸癌治療においては、分子標的薬である抗Epidermal Growth factor Receptor(EGFR)抗体薬が標準治療の一つとして広く用いられている。しかし、K-RAS変異陽性の癌には無効で、K-RAS野生型においても症例により効果は異なる。一方、消化器内視鏡領域においても、分子イメージング技術が急速に進歩し、近い将来重要な役割を担うことが期待される。そこで本研究では、蛍光標識抗EGFR抗体を用いて大腸癌細胞株における蛍光強度を解析し、消化器内視鏡の分子診断学に応用しうるかどうかを検討した。【方法】1)ヒト大腸癌細胞(COLO320DM、HT-29、DLD-1、M7609)におけるEGFR発現数は、抗EGFRモノクローナル抗体を用いたフローサイト-メトリー法により算出した。2)大腸癌細胞のイメージングは、まずin vitroで各細胞にAlexa Fluor488標識抗EGFR抗体を反応させ、共焦点レーザー顕微鏡下に観察を行った。KEYENCE社製BIOREVOを用いて細胞あたりの蛍光強度を定量化した。3)各大腸癌細胞株にcetuximabを添加して細胞増殖を調べた。【結果】1)M7609、HT-29、DLD-1、COLO320DM各細胞におけるEGFR発現数(/細胞)は、それぞれ45000個、23000個、12800個、8個であった。2)各細胞における蛍光強度は、細胞膜表面上のEGFR数にほぼ比例して段階的に増加した(COLO320DM:29.3、DLD-1:42.3、HT-29:71.3、M7609:67.7)。3)K-RAS変異細胞(M7609)、B-RAF変異細胞(HT-29)では、cetuximabによる細胞増殖の抑制は認められなかった。K-RAS野生型細胞においても、EGFR数の極めて少ないCOLO320DMでは細胞増殖の抑制は認められなかった。【結論】蛍光標識抗EGFR抗体を用いた分子イメージングは、大腸癌の分子診断、抗EGFR抗体薬の効果予測、ひいては効果判定に応用しうることが示唆された。現在、in vivoの蛍光イメージングを行っており、in vivoにおける抗EGFR抗体薬の効果予測、効果判定についても併せて報告したい。
索引用語 大腸癌, EGFR