抄録 |
【緒言】潰瘍性大腸炎(UC)の消化管病変は一般的には大腸に限局するとされているが,稀に上部消化管病変として大腸病変類似のびまん性十二指腸炎を伴う場合があることが知られている.今回,著明な胃十二指腸病変を認めた小児UC症例を経験したので報告する.【症例】10歳代全前半,女児.【現病歴】1か月前より下痢,貧血,体重減少を認めて前医を受診した.下部消化管内視鏡により全大腸炎型UCと診断され,当院に紹介となった.【経過】入院時,小児UCの臨床活動性スコアであるPUCAIは75(重症)であった.5-ASA 3g,PSL 60mgを開始したが心窩部痛が持続するため,第6病日に上部消化管内視鏡を施行した.表層性胃炎,幽門部の多発性びらん,十二指腸球部から水平脚まで全周性,び慢性に連続する顆粒状粘膜を認めた.スキップ病変などクローン病を示唆する所見は認めなかった.十二指腸病変部の組織検査では,びまん性の慢性活動性炎症や陰窩膿瘍を認めた.以上よりUCの上部消化管病変と考えた.5-ASAの粉砕投与が膵酵素の上昇のため中止となったが,腹痛と血性下痢が持続するためステロイド抵抗性と考え,第23病日からプログラフを追加した.症状は速やかに改善し,上下部内視鏡所見も改善したので第73病日,退院となった.【考察】HoriらはUCの7.6%で胃十二指腸病変を合併したと報告している.また,UCに関連するびまん性十二指腸炎は病型(全大腸炎型)と関連していたり,大腸切除後に出現する場合があることも報告されている.Rectal sparingや上部消化管病変など,非典型例を認識しておくことは誤診を防ぐために重要である.カプセル内視鏡や小腸内視鏡の普及に伴い,小児でもUCの上部消化管病変が診断される機会が増えるものと予想されるが,その頻度や病態,臨床的意義,治療方法を明らかにしていく必要がある.【結語】UCであっても下部消化管のみならず上部消化管にも注意して診断や管理を行う必要があるが,内視鏡などの検査をどのような症例に適応するのかは今後検討が必要である. |