共同演者 |
川上 研(城山病院), 井上 拓也(大阪医大・2内科), 平田 好正(城山病院), 藤井 研介(城山病院), 新田 敏勝(城山病院), 川崎 浩資(城山病院), 東野 健(城山病院), 石橋 孝嗣(城山病院), 江頭 由太郎(大阪医大・病理学), 樋口 和秀(大阪医大・2内科) |
抄録 |
【症例】51歳,男性.【主訴】下痢,発熱【現病歴】便潜血反応陽性を指摘されたため,当科を紹介され受診した.一日数回の下痢があり大腸内視鏡(CS)を行ったところ直腸では血管透見は消失し,びらん,膿性白苔を伴う粗造な粘膜を認め,直腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断.メサラジン内服により改善傾向を示したが,2週間後より下痢回数の増悪を認め,メサラジン注腸を追加とした.翌日より心窩部痛が出現し,下痢回数も増悪し,高熱も認めた.腹部CTでは全大腸の壁肥厚が指摘され,血液検査にて炎症反応が著明に上昇していたため同日緊急入院となった.【経過】入院後に行ったCSでは,S状結腸から直腸にかけて不整な地図状潰瘍が全周性に多発し,粘膜は易出血性であった.潰瘍性大腸炎の増悪およびサイトメガロウイルス(CMV)感染合併を疑ったが,症状の悪化がメサラジン投与直後のためメサラジンアレルギーの可能性も考慮し,メサラジンを中止し,絶食の上,TPNを開始.症状,炎症反応は改善せず,CMV感染を否定した上で,G-CAPを導入し,PSL強力静注療法を開始した.症状は次第に改善傾向を示し,第17病日に行ったCSでは,炎症性ポリープは多発しているが,粘膜の浮腫は改善し,潰瘍底に再生粘膜を認めた.その後症状,血液検査ともに改善を認め,第39病日に軽快退院となった.メサラジンの薬剤リンパ球刺激試験(DLST)は陽性であり,潰瘍性大腸炎の増悪に,メサラジンアレルギーが関与したと考え,PSL漸減中に寛解維持目的にアザチオプリンを開始した.退院後約3ヶ月後に行ったCSでは,盲腸からS状結腸まで炎症性ポリープが散見されたが,血管透見は良好であった.【考察】本症例はメサラジンアレルギーによる増悪を認めた症例である.メサラジンアレルギーは潰瘍性大腸炎に類似した症状を引き起こす事があり,加療中に増悪した場合は薬剤アレルギーの可能性も念頭におく必要があり,若干の文献的敵考察を加え報告する. |