セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

大腸-炎症

タイトル 内P-341:

当院で経験した赤痢アメーバ症の5例

演者 竹下 枝里(唐津赤十字病院・内科)
共同演者 嬉野 博志(唐津赤十字病院・内科), 鶴岡 ななえ(唐津赤十字病院・内科), 野田 隆博(唐津赤十字病院・内科)
抄録 【はじめに】赤痢アメーバ症は,主として熱帯の開発途上国を中心に年間5000万人の感染を起こしていると推定されており,本邦においても最近は年間800人前後の報告がされ,年間報告数は毎年10%前後の増加がみられている.当院でも比較的特徴的な内視鏡的所見を呈した赤痢アメーバ症を5例経験したため,若干の文献的考察を加えここに報告する.【対象】2005年1月~2012年12月までの期間,当院にて赤痢アメーバ症と診断・治療された5例.【結果】症例は,全例男性であり,平均年齢は35歳(30-72歳).病悩期間は他院にて潰瘍性大腸炎と診断・加療されていた1例を除き,平均6日(3-20)であった.主訴は下痢1例,血便2例,発熱2例であり,内視鏡所見にて汚い白苔を伴ったビラン・潰瘍を3例に認め,2例に紅暈を伴ったタコイボ様ビランを認めた.病変の分布は全例で盲腸に病変を認め,上行結腸まで認めるものが4例,横行結腸・下行結腸・S状結腸には認めず,直腸に病変を認めたのは4例であった.発症1年以内での海外渡航例は認めず,HIV感染陽性者も認めなかった.同性愛歴を持つ患者もおらず,1例で異性間性的接触による感染が疑われたが,他4症例では感染経路不明であった.また,発熱で発症した2例に肝膿瘍を合併していた.白苔を伴った潰瘍を認めた3例では下部消化管検査で施行した生検にて赤痢アメーバ虫体を確認,他の2症例では血清抗体・膿瘍穿刺にて診断を得,メトロニダゾール1500mg/day 10-14日間の内服にて速やかに症状の軽快を認めた.その後,現在に至るまで全症例とも再燃・再発なく経過できている.【結語】当院で経験した症例は,いずれも当院受診後は速やかに下部消化管内視鏡検査が施行されており,そのためか比較的早期に診断・治療を受けていることがわかった.まだ比較的遭遇することが多くはない疾患ではあるものの,今後増加する可能性が高い疾患でもあり,また免疫不全患者においては重症化する可能性も秘めており,内視鏡的所見を熟知し速やかに診断・治療を行えるように注意すべきであると考えられた.
索引用語 赤痢アメーバ症, 大腸