共同演者 |
奥村 明彦(海南病院・消化器内科), 渡邊 一正(海南病院・消化器内科), 石川 大介(海南病院・消化器内科), 廣崎 拓也(海南病院・消化器内科), 武藤 久哲(海南病院・消化器内科), 青木 聡典(海南病院・消化器内科), 吉岡 直輝(海南病院・消化器内科), 柴田 寛幸(海南病院・消化器内科) |
抄録 |
【背景と目的】 2012年4月より内視鏡的大腸粘膜下層剥離術(以下大腸ESD)は保険適応となり, 施設基準を満たした医療施設において施行可能となった. これに伴い全国で一般化されつつあるが, 大腸の解剖学的構造により合併症が発生しやすく手技に難渋することも多い. これらを解決すべく浸水下での大腸ESDを考案し, 実行したのでその経験を報告する. 【対象と方法】2012年4月から2013年2月までの28全症例に生理的食塩水浸水下でのESDを行った. 全例鎮静下で行った. 使用する生理的食塩水は最大3リッターまでとしこれを超えた場合, 術中穿孔が明らかな場合, 視野不良で術困難な場合は直ちに浸水を中止しCO 2送気下でのESDに変更した. 【成績】浸水下でのESD完遂率85.7%(非完遂例内訳は穿孔1例, 出血多量で視界不良2例, 筋層浸潤で中止1例 ).切開剥離時間34.2分(7~120), 平均切除径31.2×25.1mm(15×10~70×60), 入院期間8.4日(3~14), 一括完全切除率89.2%(非一括切除例内訳 分割切除1例, 多発カルチノイド1例, 筋層浸潤中止1例). 【考察】我々の考察において浸水下ESDの利点は, (1)乱反射がなく視界が鮮明 (2)切開剥離時に発生する水蒸気がなく視野が明瞭 (3)重力から解放されるため病変が浮上し体位変換が不要 (4)出血部位の同定が容易で止血が正確であることがあげられたが, 欠点として, (1)切開剥離時に気泡が混入する (2)送水量が多いとベットや室内が汚染される (3)出血量が多いと視野が不良となる(レッドアウト) (4)送水ペダルの操作が難しい, などを感じた. しかしながら浸水下そのものによる合併症は確認されず, また上記した成績結果はCO2送気下ESDとほぼ同等と考えられ, 浸水下ESDが有益な方法であるかをさらに検証すべきであると思った.【結論】大腸ESDを行う上で,浸水下での操作は有用である可能性が示唆された. |