セッション情報 ワークショップ9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

分子診断学からみた大腸腫瘍の治療成績と予後

タイトル 外W9-8:

メタボ関連大腸癌においてSIRT1発現の低下は癌進展と予後に関係する

演者 高須 千絵(徳島大・外科)
共同演者 佐藤 宏彦(徳島大・外科), 柏原 秀也(徳島大・外科)
抄録 【目的】近年メタボリックシンドロ-ムで大腸癌のリスクが高まることが示唆されている。またカロリ-制限により発現する長寿遺伝子Sir2(silent information regulator 2)が発癌に関与し、臓器や癌種によりその発現が異なる事が報告されている。今回、我々は大腸癌においてSir2 familyであるSIRT1が内臓肥満で発現が低下し、そのことで癌進展を促進し、予後予測因子となる可能性があるという知見を得たので報告する。【対象・方法】大腸癌手術症例27例(Stage I:1例、II:11例、III:8例、IV:7例)を対象とし、real time PCRと免疫染色によりSIRT1発現を測定し、SIRT1発現と臨床病理学的因子、特に肥満指標(Body Mass Index(BMI)、Subcutaneous Fat Area (SFA)、Visceral Fat Area(VFA))も因子に含めて関連性を検討した。PCRではSIRT1<中央値を低値群、≧中央値を高値群とし、免疫染色では核に中等度~強度染色を認めるものを陽性とした。【結果】1.PCRでは、高値群は14例、低値群は13例となり、低値群ではStage III/IV、N1-3、症例が多かった。SIRT1低値群は高値群に比し、VFA高値が多い傾向を認めた (低値群 : 高値群=38.0% : 14.0%)。また、3年無再発生存率(低値群 : 高値群=38% : 90%)はSIRT1低値群で有意に低く、SIRT1低値が独立再発規定因子として同定できた。2. 免疫染色では、SIRT1は36%で陽性を示し、Stage別陽性率はStage I+ II : III+IV=50% : 20%と悪性度と逆相関し、陰性群ではN1-3、P1-3症例が多かった。また、4年生存率は陰性群 : 陽性群=66% : 100%、4年無再発生存率は陰性群 : 陽性群=57 : 77%と陰性群で低く、PCRと同様の結果となった。【結語】大腸癌において、内臓脂肪がSIRT1発現を抑制することで癌進展を促進する可能性がある。またSIRT1は予後規定因子としても有用であり、メタボリックシンドロ-ム関連大腸癌においてSIRT1は治療標的になる可能性があると考えられる。
索引用語 SIRT1, メタボリックシンドローム