抄録 |
症例は76歳, 男性. 主訴はない. 2009年に検診目的で施行した大腸内視鏡検査で, 回盲弁上に約30mm大の亜有茎性粘膜下腫瘍を指摘された. Cushion signは陽性を示し, EUSで粘膜下に多房性嚢胞構造を認め, リンパ管腫あるいは脂肪腫などの良性腫瘍と考えられた. 本人の意向もあり定期的経過観察となった. しかし2012年の大腸内視鏡検査および腹部CT検査で, 前年と比較して約10mmの腫瘍増大を認めた. 腫瘍径が大きく, 内視鏡的切除術の適応外とされ当科紹介となり, 侵襲の少ない腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した. 切除標本で回盲弁上唇に30×25mm大の広基性有茎性粘膜下腫瘍を認めた. 病理組織学的検査では粘膜下に多発性嚢胞状構造を認め, リンパ球を交える非粘液性内容を伴っていた. 内皮細胞はD2-40陽性でありリンパ管腫と診断した. 近年の内視鏡検査の普及により消化管リンパ管腫の報告は増加している. しかし回盲弁上リンパ管腫はいまだ稀な病態で, 本邦では13例の報告があるのみであった. 他の消化管構造と比べ回盲弁筋層は発達しているため穿孔の危険性が少なく内視鏡的切除の良い適応と推察されており, 全例が内視鏡的切除術を施行していた. 今回われわれは, 稀な回盲弁上リンパ管腫を外科的切除した1例を経験した. 手術切除標本による病理組織学的所見から, 回盲弁上リンパ管腫の内視鏡的切除術の適応の妥当性について検討することができたため, 若干の文献的考察を加えて報告する. |