セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

大腸-症例2

タイトル 内P-449:

SLEの経過中に発症した特発性腸間膜静脈硬化症の1例

演者 田中 育太(高松市民病院・消化器内科)
共同演者 友兼 毅(高松市民病院・消化器内科), 多田 早織(高松市民病院・消化器内科), 吉野 すみ(高松市民病院・内科), 熊谷 久治郎(高松市民病院・病理部)
抄録 特発性腸間膜静脈硬化症(以下IMP)は1991年に初めて報告され,最近その疾患概念が確立された比較的稀な原因不明の腸疾患で,腸間膜静脈硬化症に起因した慢性的な虚血性大腸病変とされている.併存疾患として肝機能障害が最も多く,他高血圧や紅斑性天疱瘡,橋本病や自己免疫性疾患などが報告され,近年では漢方薬服用歴のあるIMP症例の報告も増加している.今回,SLE加療中に発症したIMPの1例を経験したので報告する.症例は61歳女性.SLE,高血圧などで当院内科に通院中,平成23年2月頃より軟便を自覚し3月に受診された.便培養で明らかな異常を認めず,CFでcecumに潰瘍性病変と上行からS状結腸にかけてびまん性に粘膜の軽度発赤を認め,病理組織検査も施行されたが確定診断は得られず,症状も自然に軽減していた.24年11月再度軟便傾向となりCFを施行,全結腸に粘膜の暗紫色変化や散在するびらんを認めた.病理組織検査で,粘膜固有層に増生した毛細血管周囲の膠原繊維の増加と,粘膜下層の静脈壁の肥厚や石灰化を認めた.また,腹部CT.にて上行~横行結腸周囲に線状石灰化を認めIMPと診断した.症状は自然に軽減し,以後外来で経過観察を行なっている.IMPは,検索し得た限り自己免疫性疾患の中でもSLEへの合併例の報告はなく,本症例も軟便傾向の際にSLEDAIスコア4点とSLEの病態悪化はみられなかった.しかし,漢方服薬が原因と思われた症例報告でも服薬から症状出現や診断までの期間が2~19年と長く,また数年の経過中に腸間壁や腸間膜の石灰化が確認されるようになった報告例もあり,本症例もSLEとIMPの関連を否定できない.SLE症例に下痢や軟便,腹痛などの消化器症状を認めた場合,炎症性腸疾患や感染性腸炎と共にIMPも鑑別診断の一つとなる可能性が示唆された.
索引用語 特発性腸間膜静脈硬化症, SLE