セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

大腸-症例3

タイトル 内P-456:

ALTA施行後,遷延性の全周性直腸潰瘍を発症し,高度の直腸狭窄に至った1例

演者 渡海 義隆(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科)
共同演者 小泉 浩一(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科), 剛崎 有加(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科), 千葉 和朗(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科), 田畑 拓久(がん・感染症センター都立駒込病院・内視鏡科), 桑田 剛(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科)
抄録 【諸言】硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸注射液(以下ALTA)は,その収斂作用・止血作用および起炎作用により,非観血的に病変組織を硬化退縮させる内痔核硬化療法剤である.ALTA療法は患者にとって低侵襲で簡便に施行できるので,内痔核に対する標準治療のひとつとなっているが,薬理作用が強いがために重篤な偶発症が起きうると報告されている.今回我々は,ALTA施行後に遷延性の全周性直腸潰瘍ならびに狭窄を来した1例を経験したので報告する.【症例】53歳男性.内痔核に対してALTA療法施行.その3週後に頻便および排便後の粘液排出が出現した.下部消化管内視鏡検査では直腸下部歯状線直上のびらん.潰瘍と,直腸S状部までの不整形潰瘍の多発を認めた.下部直腸のびらん・潰瘍は比較的早期に治癒したが,上部直腸から直腸S上部にかけての全周性の深掘れ潰瘍が持続し,潰瘍口側.肛門側に高度の狭窄を来し,頻便,排便困難となったため,精査加療目的に当院紹介となった.来院時の下部消化管内視鏡検査でも直腸AV7cmから長軸5cmにわたる全周性潰瘍とその両端に高度狭窄を認めた.狭窄に対しバルーン拡張術を施行し,通過障害を解除しながら経過観察を行ったところ,潰瘍は徐々に上皮化したが,治癒は遷延し,瘢痕狭窄による通過障害を繰り返した.初回拡張術から1年後,計13回のバルーン拡張術後には潰瘍は治癒し,症状も軽快した.【まとめ】ALTA療法に伴う副作用・合併症として,発熱,直腸潰瘍,肛門狭窄,便失禁などが報告されている.直腸潰瘍の原因としては,薬剤の的確な粘膜下層への投与と薬剤の組織内分散がなされなかった場合に生じる可能性が示唆されている.本例では上部直腸での分節状の深掘れ潰瘍をきたして治癒は遷延化し,虚血性変化の存在が示唆された.頻回のバルーン拡張を要したが保存的に治療可能であった.文献的考察を踏まえて考察し,報告する.
索引用語 ALTA, 直腸潰瘍